獣医師の仕事は「動物を治療すること」だけでいいのだろうか
はじめまして。獣医師の田代修です。
沖縄県西原町にある動物病院「杜ノ庭どうぶつ病院」の院長をしています。
杜ノ庭どうぶつ病院が開院したのは2019年7月。
今年の夏で5年目を迎えます。
この記事では、自己紹介をかねて私が獣医師として大切にしていることを述べていきます。
「動物と共に過ごせる時間」は限られている
私は、獣医師として動物の治療・ケアに従事しています。
さらに自宅では、犬・猫のほか、イグアナや亀、金魚など様々な動物たちと共に暮らす生活を送っています。
私たちが共に暮らす動物たちは「生き物」です。
「生き物」である以上、いつでも元気でいられるとは限りません。
病気になったり、ケガをしたりすることもあるでしょう。
それに、ほとんどの動物は私たちより短命で、いつか必ずお別れの時が訪れます。
わざわざ書くこともないほどに当たり前のことかもしれませんが「動物と共に過ごせる時間」は限られているのです。
しかし、私たちは、この当たり前のことを、つい忘れてしまいます。
生きている限り、いつか必ずお別れの時が訪れる。この事実を思い出すのは、病気やケガ等、健康を害したときです。
だから、その事実を忘れて過ごせることは、「元気で暮らせている」という意味では幸せな状態なのでしょう。
だけど「病気になったり、ケガをしたりするからこそ得られるもの」があるのではないかーー私は、このように考えているのです。
「病気になったことで、動物とより深く関わることができた」
私がそう考えるようになったきっかけの一つは、ある飼い主さんから掛けていただいた言葉です。
その方が飼っていた動物には、持病がありました。
いくつかの病院を回った後に私たちの病院にやってきましたが、残念ながら寛解することなく亡くなってしまいました。
しかし、その子が亡くなった後、飼い主さんはこのように話してくれたのです。
亡くなったのに「いい時間を過ごすことができた」と感じることに、違和感を覚えるでしょうか。
闘病は大変だったことでしょう。この飼い主さんも「大変だったし、しんどかった」と素直に語っておられました。
とはいえ、闘病を通じて感じたのは「大変さ」「しんどさ」だけではなかったといいます。
さらに、こんなことも話してくれました。
治療を通じて「家族の幸せ」と向き合っていく
この出来事をきっかけに、以前から大切にしてきたことが、より明確になりました。
もちろん動物が元気で過ごせるような治療・ケアは、とても大切なものです。
私たちの病院でも、様々な動物種の多様な疾患に対して、最善と思われる治療を提案し、精度の高い治療を提供できるよう、知識や技術の習得に力を注いでいます。
しかし、私たちの仕事は、それだけではありません。
動物の治療を通じて、動物を含めた家族みんなの幸せと向き合うこと。
それが、獣医療の本質ではないでしょうか。
「動物を含めた家族みんなの幸せ」は、千差万別。
動物が暮らす環境や家族の状況によって、まるで違うものになります。
動物を含めた家族全員として、どんな時間を過ごしたいか。
家族全員の状況を考えた時、どんな治療・ケアが適切だろうか。
このように「何が最善の治療なのか」は、病気やケガなどの「症状」を診ているだけではわからないのです。
病気やケガ等の症状、動物の状況・状態を診るだけではなく、動物を含めた「家族」と向き合い、飼い主さんとの対話を重ねていくことが「動物を含めた家族みんなの幸せ」につながるはずだ。
私は、そのように考え、日々の診療やスタッフの育成に携わっています。
動物と過ごせる限られた時間が、豊かなものであって欲しい
冒頭でもお伝えしましたが、私たちが共に暮らす動物たちは「生き物」で、いつか必ずお別れがやってきます。
動物と共に過ごすことができる時間は、限られているのです。
だからこそ、そんな有限の時間を、より豊かなものにしていけるように。
人と動物たちの一緒に過ごす限られた時間が、少しでも充実したものとなるように。
これからも、動物と家族に寄り添い、そのお手伝いをしていきたいと思っています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このnoteでは「動物と人間の暮らし」についての気づき、想いを綴っていきます。ぜひまたお読みいただければ幸いです。
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