三浦春馬 ドラマ「小さな故意の物語」〜若き恋の残酷さ
2012年に放映された、東野圭吾ミステリーシリーズ第8話「小さな故意の物語」を、久しぶりにまた視聴した。
この時、春馬くん22歳。まだ瑞々しい少年の面影があり、学生服も似合っている。
もう、何回目かも数えなくなった春馬くんの月命日。
数え続けても、永遠に終わりはないのだから…
今日は似顔絵ではなく、久しぶりに春馬くん出演のドラマの感想を綴りたいと思う。
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良(春馬くん)、洋子(波瑠さん)、達也(大野拓朗さん)の三人は幼馴染で、高校のサッカー部でもいつも一緒だった。
達也はサッカー部のエースで、マネージャーの洋子は達也の彼女でもある。
高三になり部活を引退した日、良はこれでやっと二人と離れられると思う。
なぜなら、密かに洋子へ想いを寄せる良は、交際する二人を傍で見続けるのが、辛かったからだ。
そんなある日、達也が突然、学校の屋上から転落し亡くなってしまう。
なぜ達也は死んだのか?事故だったのか?
親友である自分にさえ、打ち明けられない何かがあったのか?
その理由を知りたいと良は強く願い、原因を探り始める。
そんな良の姿に、春馬くんを想う私たちは恐らく、自分自身を重ね合わせてしまうのではなかろうか。
未だに、なぜ?という言葉が不意に湧き上がってくる時がある。
なぜ?
ーあなたは突然、何も言わずに姿を消したのか?
なぜ?
ー私たちと同じこの世界に、今あなたは居ないのか?
答えのない問いかけだけが、ただ虚しく頭の中を際限なく回り続けている…
達也役の大野拓朗さんのことは、全く存じ上げなかったので少し調べてみたら、現在は舞台俳優としても活躍されていて、30歳の時にニューヨークへ留学、昨年からミュージカルの本場ロンドン ウェストエンドの舞台にも日本人キャストとして立ち、世界へ挑戦し続けていることを知った。
それらは全て、春馬くんも30代で目標としていたことだった…。
かつての共演者が、春馬くんの夢みたことを現実に叶えてゆく。素晴らしいと思うと同時に、その場所に今ごろ春馬くんもいた筈なのに…という思いが消えない。
あなたがいなくなってからも、世界は歩みを止めず、前へ前へと進んでゆく…そのことが今も、私には辛い。
ここでも、無常な時の流れを感じてしまう…
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ドラマの冒頭、良、洋子、達也が仲良く並んで草の上に寝転んでいたシーンは、なんの屈託もなかった幼い頃のまま、平和な時間が流れているように見えた。
良が洋子の寝顔を見つめ、そっと、偶然触れたかのように、自分の手を洋子の手に添わせるシーンは切なく印象的だったが、ラストでは、洋子もそんな良の想いに応えるかのように、二人の手は軽く繋がれていた事実が映し出される。
そして、実は達也も、そんな二人の様子を目にし気づいていたことが、視聴者にだけ明かされる見せ方は秀逸で、三人の恋が複雑に絡み合い交差してゆく様が、一瞬にして伝わってきた。
達也に片想いしていた下級生の笠井(三吉彩花さん)が、少しでいいから自分に振り向いてほしいと、達也へ取ったある行動がきっかけとなり、物語は予想外の展開を迎える。
青春の過ちというには、あまりにも運命は残酷で、死してなお良と洋子の間に立ちはだかる達也の存在は、二人に暗い影を落とす。
最後に、全てを悟った良の、絶望と悲しみに打ちひしがれ歪む表情と、崩れ落ちてゆく姿、春馬くんの演技が、ヒリヒリした痛みと共に心へ突き刺さる。
なんで…ぐしゃぐしゃの泣き顔まで、そんなに美しいんだ…春馬くん…
ミステリーの謎解きよりも、若い恋の残酷さ、身勝手さ、切なさが、心に深く染みこんでゆく、そんな短編ドラマだった。