ドラマ「団地のふたり」〜変わらないもの、変わってゆくもの
ドラマ「団地のふたり」は、週末の癒しである。
50代独身、一度は実家のある団地を出たものの、紆余曲折を経てまた団地に戻り暮らしている、小泉今日子さん演じるけっこう生真面目だけど子供みたいな面もある大学講師・ノエチと、小林聡美さん演じる自由人のイラストレーター・なっちゃんの、息の合ったコンビの掛け合いも楽しい。
お二人は、これまで幾度も共演歴があり、同い年の友人でもあり、ノエチとなっちゃんを演じる姿を見ていると、ほんとに子供の頃からずっと一緒だった幼な馴染み感がある。
ノエチとなっちゃんは、ただ仲良しなだけじゃなく、ちょっとしたことで険悪な雰囲気になったりもするが、とくに謝ったりするわけでもなく、また自然に仲直りしていたりするところなんて、長年の友人関係あるあるだなぁと、微笑ましく思いながら見ている。
50代半ばのふたりは世間的に見ればいい歳なのだけど、団地ではまだまだ若手で、おばちゃん達(由紀さおりさん、名取裕子さん)から次々に網戸の張り替えを頼まれて、お駄賃をもらったり、なんだか子供の時から扱いが全然変わってないみたいに見えるのも面白い。
実家暮らしなのに、毎日のようにノエチはなっちゃんの部屋で晩御飯を食べていて、なっちゃんの手料理が毎回とっても美味しそう。
たまにノエチが実家で晩御飯を食べると言うと、両親(橋爪功さん、丘みつ子さん)に不審がられるほど、日頃からなっちゃんの家に入り浸っている。
もうここまで来ると、友達というより家族とか姉妹、従兄弟みたいな関係という気もする。
なっちゃんの家は、玄関の間仕切りがステンドグラスにしてあったり、さりげないセンスが感じられるインテリアにも目がゆく。
団地は全く同じ間取りの筈なのに、各家庭で随分と室内の印象が違うところも興味深い。
ノエチの兄(杉本哲太さん)が実家に置きっぱなしにしていた段ボールから、懐かしのお宝を発見したふたりは、フリマアプリでそれらやおばちゃん達から預かったレトロな物を売っては、ちょっとしたお小遣い稼ぎをして盛り上がっている。
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大事件が起きるわけでもなく、毎日ゆる〜く時間が流れているような郊外の団地が舞台だが、団地は一つの街というか共同体のような雰囲気がある。
私は団地で育ったわけじゃないけど、小学校の同級生には団地から通っていた子もいた。
団地の子たちは結束が固く、年長の子が年少の子の面倒をよくみていたし、放課後も団地の敷地内で集まって遊んでいたりして、仲間意識も強かったので、なかなかその中に入ってゆくことは難しかった。
よそ者ばかりの集まりである、畑をつぶして建てられた新興住宅地で育った私には、団地の子たちの大きな家族みたいな絆がちょっと羨ましくもあり、団地の方が人付き合いが濃い気がした。
新興住宅地の子たちは、小学校くらいまではママ友など親同士が仲の良い子となんとなく一緒に遊んでいた感じだったが、高学年になると住んでいる場所に関係なく自分基準で選んだ子と付き合うようになっていった。
くらもちふさこさんの漫画「いろはにこんぺいと」なんて、まさに団地の物語で、シングルファーザーの家の子・くんちゃんを、同じ団地の女子高生チャコが面倒看ていたり、幼馴染との恋など、団地内での人間関係がユーモラスに時に切なく描かれていた。
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現在、私の実家があった住宅街は高齢化が進み、子供がいる家庭は激減し、空き家も数軒見られるようになり、昼間でも人っ子ひとり歩いていないゴーストタウンみたいになってしまった。
たぶんその近くにあった団地の方も、似たような状況ではないかと思われる。
ノエチとなっちゃんが住む団地も高齢化、老朽化は避けられず、8話ではついに建て替えの話が具体化する。
傍目には子供の頃から変わらない環境で、のほほんと生きているように見えるふたりにも、ついに大きな変化が訪れることになるのだった。
今、自分もこの歳にして変化の真っ只中にいる事もあり、望むと望まざるとにかかわらず、一生変わらないものなんてやっぱりないんだよなぁ…と、つくづく身につまされている。
たまに一時帰国すると会う学生時代からの友人達とも、すでに30数年来の付き合いになり、共に10代の頃を知っている仲だが、会う度毎に、外見(白髪増えた、ふくよかになった)とか、体力的な事(すぐ疲れてお茶したくなる、目がしょぼしょぼする)とか、お互い年取ったなぁ…と思うことも増えて、なんだかノエチとなっちゃんの姿が人ごととは思えない。
小泉さんと聡美さんはその年齢にしては若々しいけれど、中年らしい変化が全く見られないというわけでもない。
老齢というにはまだ早く、されど心身の衰えも徐々に自覚し始める微妙な年代。
そういう所もリアルで惹きつけられるドラマなのだ。
最終回まであと2話、名残惜しいけれど、ふたりと団地の行く末を見届けようと思う。
キョンキョンと聡美さんの共演名作ドラマ「すいか」の記事も書いてます。
この頃のお二人はまだ30代。時の流れは早いものです…