瀬尾まいこさん『天国はまだ遠く』日常に疲れたらエスケープすればいいんだ
本日は瀬尾まいこさんの『天国はまだ遠く』をご紹介します。
瀬尾まいこさんは作家としてのキャリアがずいぶん長いのに、どうしてあまり読んでこなかったんだろう。
この本を読んで、ちょっぴり後悔。
パウロ・コエーリョさんの『ベロニカは死ぬことにした』という本があるんですけど、この『天国はまだ遠く』も主人公の女性が自殺をはかろうとするのですが、未遂に終わります。
そこから、日々、生きることや自分と向き合っていくという点では共通しています。
本作の方が重くない。
主人公が意外と抜けた感じもあって愛嬌があったり、田村の懐深さ情、とぼけた冗談も楽しくて、スルスル読めちゃいます。
主人公の千鶴は23歳。
保険会社では営業をしていますがノルマは達成できないし、上司からのプレッシャーもきついし、人間関係もうまくいきません。
彼氏とも別れ、死ぬための旅に出て山間の民宿にたどり着きます。
睡眠薬を飲み意識をなくし、そのまま32時間もの間ぐっすり眠ります。
そうして目覚めた頃には、気分爽快で自殺念慮もすっかり消え失せていました。
民宿の男の田村は、お客である千鶴のために朝食の準備を整えていました。
"私は手を合わせると、ご飯を口に入れた。
いつもは朝食を取らないのに、さすがにお腹が空っぽになっているせいか、食べることができた。
自殺を失敗したというのに、身体はのんきなものだ。
一昨日、死のうとしていた私は、今朝、ぴんぴんと
してご飯を食べている。
「この辺で作られてる味噌は、寒いで味が濃いんや」
味噌汁を飲んで顔をしかめた私に、男が言った。
味噌汁とご飯、白菜の漬け物、卵焼き、鰺の干物。
旅館の朝食らしい献立はどれもおいしかった。"(p40)
民宿で3食を食べさせてもらい、日があるうちは集落を散歩して過ごします。
自然の中でゆっくりしたり、鶏を飼育して絞めて食べる、舟で魚を釣りに行ったり、地元の人との酒盛りをしたり、自分のいたところから遠くに来て、いろんな体験をします。
滋養のある食べ物を食べ、日中はお日さまのもと歩き、夜はぐっすり眠る。
千鶴の心も体もぐんぐん健やかになっていきます。
でも、まだやりたいことはわからないまま。
たとえ居心地が良くても、ここには自分の居場所がないことに気づき、旅を終わらせる日が訪れます。
千鶴はこの日々を糧に、自分の道をしっかり見つけて生きていくのでしょう。
希望のある小説で、すごく良かったです。
普段の生活を大切にしたくなりました。
地に足をつけて、しっかり生きていこうと思える。
ありのままでいいんです。
頑張りすぎない。
自分の居場所はゆっくり見つけていこう。
日常に疲れた大人のみなさんに読んで欲しい1冊です。
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