あの子の日記 「知らない」
日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集
「ちょっと飲みに行こうよ」なんて、珍しいと思ったんだ。いつもと変わらず可愛らしい笑顔の君だけど、今日はなんだか違うね。
他愛もない会話が一区切りついて、冷たいハイボールを飲み干した後の一瞬に寂しそうな表情が浮かんでいた。
君は飲むペースが上がるにつれ、ゼンマイ切れのおもちゃみたいに話す速度がだんだんと遅くなっていく。お酒が悲しい気持ちを溶かしてくれないことなんて知ってるくせに、今日はたくさん飲んでしまったね。
ふらつきながらお店を出ると、君の赤らんだ顔が街灯に照らされて色っぽく見える。下心があるわけじゃないけど、今日は家まで送るよ。
僕も多少なりとも酔っているわけだけど、まだ理性は保ってる。君を家まで送ったら、自分の家まで真っすぐ帰宅するんだ。
だけどさ、君に「ねえ、もう帰るの?」なんて言われたら気持ちが揺らいでしまう。僕の意志ってこんなに弱かったっけ。いつの間にか繋いでいた手が僕と君を離さない。
こうして手を繋いだことも、僕の心拍数をうんと上げたことも、明日になれば君はきっと忘れているね。
僕がずっと君に惹かれてることだって、きっと気付いていないんだろうな。
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あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。