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あの子の日記 「永遠に」

日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集

ぼやけた視界が生み出す街は、世界一うつくしいイルミネーション。

特別な場所へ出かけなくても、日が沈めばいつだって、目の前は太陽よりも眩しくきらめく。

「見て、あの橋きれいよ。渋滞してる」

橋の上に均等に並んだブレーキランプは、進んでは止まり、進んでは止まりをくり返す。

「あっちの道にすればよかったな」
「うそー、永遠に帰れなくなっちゃうじゃん」

エンジンの音がよく聞こえるようになった車内には、いつからか音楽が流れていた。「気軽なジョークが途切れないようにしてね。沈黙がこわい」と歌う誰かが、張りつめた空気をやさしく溶かしていく。

「あのさ。わたし、明日、休みだったかも」
「うん」
「少しくらい、遅くなっても、平気かも」

青信号がつづく、すいた道路を走る二人は、近づく明日から逃げはじめた。

あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。