映画 犬ころたちの唄の感想
「舞台挨拶終わったら、店戻るけぇ」
11月19日16時。映画の初日にも、普段通り仕込みを行う。
舞台挨拶という特別をポケットに入れながら仕込みを終えたその人は、4時間半後には喉ちんこが見えるほど大きく口を拡げて横川シネマでギターを鳴らし絶唱していた。
配信3部作を鑑賞したのが去年の12月。
『海と川の境い目ってどこかね』
という台詞が引っ掛かっていた。境目を意識する瞬間は苦しい。
汽水の中にいる犬は溺れているのか、泳いでいるのか。水面からはわからない。
兄弟は衝突し続ける、修復もできないほどに。音楽が酒場がその亀裂に入り込む。
もっと飲め もっと飲め、もっと唄え もっと唄え
わたしは横川の街を何も知らない。
あの横丁の曲がり角で舞台挨拶が終わり、ギターを担ぎ急いで店に戻る後ろ姿が見えた気がした。
犬ころたちの唄は続いている。