近刊『工学系のための 伝わるライティング入門-実験レポートから英語論文まで-』まえがき公開
2021年8月下旬発行予定の新刊書籍、『工学系のための 伝わるライティング入門-実験レポートから英語論文まで-』のご紹介です。
同書の「まえがき」を、発行に先駆けて公開します。
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まえがき
オンライン授業が増え、レポートや論文をパソコンで書いて、ファイルを送信して提出することが一般的になってきました。この本は、工学を学んでいる大学生や大学院生をおもな対象としています。学生の皆さんが提出された文章を読むと、書き方を具体的に学ぶ機会のないままレポートや論文の作成に取り組んでいるように感じます。皆さんも、提出してから書き方が悪いと怒られたり、自分ではうまく書けたと思っていたのに点数が悪かったり、がっかりした経験があるかもしれません。国語や作文が苦手だから工学系の学部を選んだのに、こんなに文章を書くことになるとは思ってもみなかった、という人もいるでしょう。 工学は、人の役に立つ技術や手法を開発するための学問です。そのため、皆さんが学んだり研究したりした成果は、多くの人に内容を正しく知ってもらう必要があり、適切な文章を書くことはとても大切なのです。うまい言い回しや美辞麗句は必要ありませんが、何よりも誤解のないように書かなければなりません。この本では、そのような文章をパソコンやタブレットなどのデジタルデバイスで書く、デジタルライティングのポイントをまとめました。
これまでも理工系向けの文書作成ガイド本はたくさんありましたが、原稿用紙などに手で書く場合の教則本がほとんどでした。しかし、デジタルデバイスを使って書く場合には、デジタル特有の注意点があります。この本では、工学分野で書く機会の多いレポートや論文を作成するための基本を、わかりやすい言葉で説明しました。
読んだあとは、実践を継続していきましょう。授業で出される課題やゼミ資料の作成に、ぜひこの本で学んだ知識を活かして取り組んでください。
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『工学系のための 伝わるライティング入門-実験レポートから英語論文まで-』
https://www.morikita.co.jp/books/mid/097531
共著:伊津野和行(立命館大) 荒木努(立命館大) 四井早紀(立命館大)
『工学系らしい文章』ってふつうの文章とどう違う?
・実験材料のAとBを攪拌したら液の温度が高くなってきたから材料Cを入れた。
・供試体Dより供試体Eの強度が大きくなってしまった。
・この数値解析手法により、精度よく解を求めることができた。
これらは実は工学系の文章としてはあまりよくない例です。
どこをどう直せばよいか、みなさんわかりますか?
本書では、はじめてレポートや論文を書く工学系の学生・エンジニアのみなさんに向けて、工学系らしい文章をつくるためのポイントを解説します。
表現の仕方・論文の組み立て方・図表作成のマナーなどについて、忙しいみなさんにも読みやすく、コンパクトにまとめました。
自分の成果を文章で正しく伝えることは、分野にかかわらず役立つスキルです。
本書を通してその基本を学び、学生生活・研究生活にぜひ役立ててください。
【目次】
第1章 工学系で必要とされる文章作成技術
1.1 読者を想定した文章
1.2 誤解を生まないわかりやすさ
1.3 定性的と定量的
1.4 数字の取り扱い
1.5 書く際の心構え
1章の演習問題
第2章 レポートや論文の執筆テクニック
2.1 文章の基本
2.2 構成を考える
2.3 自分の考えを記述する
2.4 論文を書く際に注意すること
2章の演習問題
第3章 デジタルライティング
3.1 コンピュータを使った執筆
3.2 図表や写真を活用しよう
3.3 インターネットの活用
3.4 参考文献の書き方
3.5 文書の保存
3.6 文章の仕上げ
3.7 表計算ソフトを使った文書作成
3章の演習問題
第4章 実践講座:文章作成
4.1 授業で提出するレポートを書こう
4.2 日本語で研究論文を書こう
4.3 卒業論文を書こう
4.4 英語で論文を書こう
演習問題の解答例や注意点