見出し画像

下山事件にみる歴史のねじ曲げ方 プロローグ12

実は米側にも総裁殺害を供述

前回は「NHKスペシャル未解決事件File.10下山事件」に登場したRという人物が、東京地検の捜査で「事件とは無関係」と結論づけられたことを見ました。
 
しかし、GHQの覚書にもあるように検察は当初からRを重要視していませんでした。なぜGHQに強制送還の延期を要請してまで、結果的に3度もRを取り調べたのでしょう(前年にも1度調べているので合計4度。調書を巻く取り調べが3度)。

ニュアンス違う和訳

NHKの番組は、布施検事がRに興味を持っていたように描きました。
その証拠として「アメリカ公文書館に残されていた機密文書」を映し出しました。
紹介された部分はこんな感じです。
「布施は詳細な供述の中には捜査価値のある情報も含まれていると見ているようだ。それが全くのでっち上げであることが明らかになるまで、彼はRのストーリーを追い続けるだろう」

米国の関与を示唆するようなアナウンスにたまらない違和感が湧くので、画面に映った英文を私なりに訳してみました。
「布施は前もってRの過去の記録(前科などのこと)について警告を受けていたが、それでもRが話した内容の中には調べる価値があるものもあると感じていたようだ。堀検事正はたとえ話が事実でなかったとしても、さらなる捜査で完全にでっち上げであることがはっきりしない限り、やめるわけにはいかないと考えていた」
だいぶニュアンスが違いますね。

「(布施検事が)前もってRの過去の記録について警告を受けていた」というのは、公的機関の誰かから「信用ならない人物だ」と事前に聞かされていたということではないですか。もしかしたらGHQかもしれませんね……。いや、番組をよく見ていくと、どうもそんな感じがしてきます。

CICに語ったのと同じ話

画面の「機密文書」を訳していくと、布施検事が針尾から戻った4月4日、東京地検はGHQに結果を報告に行っていることが分かります。
その文書には、こんなことが書いてあります。
「Rの調書は、下山がどのように、どこで、なぜ殺害されたかを詳細に語っている。これはRが441CIC支隊の吉橋准尉に語ったのと同じ話だ」
441CIC支隊というのは、いわゆるCIC(対敵諜報部隊)のことです。
なんと、Rは検察に話す前に同じことをCICにも話していたというのです。

恩返しのための捏造とは

機密文書が経緯を明らかにします。
前回に登場願ったWが、Rの家にあった「下山殺害写真」は合成であることを検事に説明したうえで、次のように供述しています。
「Rが吉橋准尉に恩返しする(報いる)ために話をでっち上げた」
 
「恩返し」とは何でしょう。しばらくは吉橋准尉を中心に見ていくことになると思います。

シリーズ第1弾https://amzn.asia/d/cW86SCH

プロローグ13につづく)

いいなと思ったら応援しよう!