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『広告なし、読み放題。なのに年に3億円以上を稼ぐニュースレター』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.6.14
■広告なし、読み放題。なのに、年に3億円以上を稼ぐニュースレター
たった1人で年に3億円以上を稼ぐニュースレターがある
— ジャバ・ザ・ハットリ🇩🇪←🇸🇬←🇯🇵 (@nodenodenode1) June 10, 2023
発行者はボストン大学の教授
内容はアメリカの政治と歴史
記事は全てウェブから無料で読める
広告は無し、お金が儲かりそうな要素は見当たらない
その抜群の収益性にはニュースレターを活かした、誰にもマネできない秘密がある
つづく
1/18 pic.twitter.com/0AkfUxCC5e
そのニュースレターの名は「Letters from an American(あるアメリカ人からの手紙)」
著者はボストン大学の歴史学教授のヘザー・コックスさん
現在のアメリカの政治を彼女にしかできない、独特の歴史的観点から解説する
とても興味深いビジネスモデルです。
「Letters from an American(あるアメリカ人からの手紙)」ニュースレターはこちら↓
https://heathercoxrichardson.substack.com/
読むのは無料、書き込み月5ドル課金の構造
オンラインサロン的なサブスク課金収益が3億円の売上元ではあるのですが、一般的なオンラインサロンと違い、彼女のニュースレターそのものはすべて無料で読むことができます。
このニュースレターにはひとつだけ課金されるポイントがある
それは月に5ドルを払うことで記事にコメントできる機能
これが唯一の課金ポイントであり、絶大な人気をほこる
課金ポイントを「コメント書き込み」に設けています。
「書き込みするのは有料」と聞いて、「有益な情報をタダで読めるだけで十分なのに課金してまで書き込みするの?儲かるの?」と感じるかもしれません。
しかし実際年間3億円以上の収益を上げています。
なぜ大勢の人が課金してまで書き込みをするのでしょうか?
5ドルの壁で荒らしが来ない建設的な論壇
現在、ネット上のコンテンツはドンドン文字を読まなくても、深く考えなくてもいいようになっている
女の子が踊ってるショート動画が次々に出るTikTokのようなコンテンツが増えている
その一方で知的層が楽しめる場がどんどん無くなっていた
そこにオアシスのように出てきたのがLetters from an Americanのコメント欄
政治ネタを上品な英語で書かれたニュースレターには高貴な香りが漂っている
通常、政治ネタに集まるユーザーにコメント欄を設置すると罵倒と批判で荒れてしまう
対立構造が明確なアメリカではその荒れ方が凄まじい
しかしLetters from an Americanのコメント欄ではそんなことがなく、前向きな意見と建設的な話し合いがくり広げられている
既存の大手メディアがどうやっても成立できなかったもの
そこは罵倒だけが生きがいの人にとって、まったく面白くなく、決して寄りつかない場所
知的層が建設的な対話をするためのコミュニティに参加するために月5ドルの課金をする構造としています。
民主党と共和党の分断が凄まじく、トンデモ理論や陰謀論が大衆から大統領まで蔓延ってマジ大丈夫かアメリカ?と心配になる報道ばかり日本には届きますが、冷静に議論したい知識層もしっかりいると。
そしてその知識層の人たちが安全に議論できる場を心底欲しがっていた。おそらくヘザー・コックスさん自身もそういう場が欲しかったんじゃないでしょうか。
そんな高尚な英語で書かれた場に何度も訪れ、5ドルを課金してまで意見を投稿するのは知識層に限られる
これほど知的好奇心が満たされるコメント欄は他に見たことがない
まず記事を読んで「なるほど!」となる ほぼ全ての記事に数百件以上のコメントがついている
5ドルの壁を用意することで有益なコンテンツを提供できる人のみにブラッシュアップされ、一般ユーザーの高いレベルの書き込みに惹かれる層のみが入会することでメンバーとコンテンツがブラッシュアップされるという好循環が生み出されています。
主従関係ではないコミュニティ
書き込みに課金をすることで形成されるオンラインサロンコミュニティという構造は、ユーザー参加型・非中央集権分散型でとても現代的だと感じます。
一般的なオンラインサロンの主の「有益な情報」を有料で買う構造は主従関係に見えます。
対してこのヘザー・コックスさんのニュースレターの「書き込み有料」の構造は、彼女のコンテンツへ課金するのではなく、一般ユーザーの書き込むコンテンツに課金するものでもあります。
このコミュニティはおそらくヘザー・コックスさんの意見に賛同するYesマンの集まりにはならず、主義主張が各ユーザーで異なっていても「建設的な議論の場」として成立するというのも従来のオンラインサロンとは異なります。
主が強すぎないため、参加していることを外に言うのが恥ずかしいタイプのサロンになりづらいのも良い点です。いま日本でオンラインサロンとして有名なところは主のキャラクターが強すぎて「信者?」と言われがちですし、実際妄信している人も多いもの。
サロン主の中央集権型とせず、さまざまな主義主張を持つ一般ユーザーのコメントに価値を持たせる分散型コミュニティはメリットも多いですし、現代的です。
閉鎖的な雰囲気をなくし周知宣伝しやすくなる効果も
また、読むことを無料化することで、主の発言を「お金を払った人にしか見せない」ことにより生じるオンラインサロンの閉鎖的な雰囲気を払拭することにも成功しています。
その賢い人達のコメントと議論を読んで、また「なるほど!」となる
「アタシも仲間入りしようかな」と5ドルを課金して参加
この「人が人を呼ぶ仕組み」が重なって年間3億円以上を売り上げるほどの人気になった
その根底にはニュースレターというメディアが作り出すコミュニティがある
知識層ユーザーのエレガントな書き込みそのものも読むことができますし、公開情報なのでSNSなどで拡散することもできます。つまり広告宣伝しやすいメディア構造です。
NFTやPOAPが有効そう
この「Letters from an American(あるアメリカ人からの手紙)」ニュースレターの有料メンバーであること自体が知識層である証明にもなり得ます。
課金の方法はクレカでも何でもよいのでしょうが、サブスク型NFTとすればPFPアイコン化するなどして外部から観察可能な参加証明書にすることもできます。
このニュースレターで書き込みを行える人は「知識層で裕福で建設的な議論ができて掲示板を荒らさない」という属性の持ち主なわけですから、他の掲示板的コミュニティでは優遇されてもよい存在なはずです。
NFTなど外部連携可能な証明書があれば「俺は会員だもんね」と言うことを信用するのでなく、きちんとシステム連携して優遇条件を享受できるようにもできます。
まだNFT自体の取り扱いの難易度が高く一般的ではないうえ、PFPアイコンにしろ掲出できる場所が少なすぎて活用シーンが少ないのは現状ですが、外部システム連携のキーとしてNFTを使うニーズは今後高まるのではないかと思います。
ニュースレターの発行システムとしてのSubstackが会員証NFTを発行し、きちんと書き込みをすれば高ランクに成長するNFTのアップグレード機能や、特別イベントに参加したことを証明するPOAPなどを提供すれば、そのNFTと連携させた外部サービスが多数生まれるのではないでしょうか。
Peatixでも同じことが出来そうですし、今そんなサービスがないならプラットフォームとしての需要もありそうです。