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『チャットAIでレストラン電話応対を自動化「Slang.ai」2,000万米ドル調達。電話×AI』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.7.3

■元Spotifyデータサイエンティストの2人が作るレストラン電話自動応対「Slang.ai」、2,000万米ドルをシリーズA調達

注文状況を確認するために小売店に電話をかけたり、急な予約のために地元のレストランに電話をかけたのに、留守電になってしまうのは誰だって嫌なものだ。(Slang.ai を使えば)このようなことはありません。AI はこの壊れた体験を修正する可能性を秘めており、Slang ai は AI を電話に持ち込んでいる。

電話×チャットAIで2000万ドル(約28億円)を調達。

最先端技術であるチャットAIをどの市場に投入するべきか?の解答例のひとつが「DXが進んでいないアナログ市場」というニュースです。

さすがに現代、多くのお店はホームページを当然に持ち、Web上に営業時間や店休日の情報は載せています。より進んだお店なら予約もWebで受け付けていますし、自社サイトでなくても食べログやホットペッパーなどキュレーションサービスで予約できるところも多くあります。

しかし、急な当日予約などは電話のみの受付としているところも多いですし、ホームページやSNSにお店側から発信する情報以外の、顧客からの問い合わせに回答するような双方向にやり取りする方法についてはWeb化できていないところは多数に及びます。

Slang.ai の調査によると、レストラン検索アプリやサイトが広く普及しているにもかかわらず、顧客の60%は依然としてレストランに電話で問い合わせることを好む。

顧客側も電話問い合わせを好む人が未だに多く60%を占めるため、お店側も顧客ニーズに応えるために電話窓口を廃止できません。

このように電話受付が避けられない現状が数多くあることに着目し、中でもレストランや小売業の電話問い合わせに特化したチャットAIサービスがこの「Slang.ai」です。


電話の自動応答の体験を改善

事業者に電話をかけたとき、ひどい保留音楽を聴かされたり、人間と連絡が取れなかったりするような、ロボットの人質状態のように感じるべきではない。2030年までに、我々は企業と消費者の貴重な時間を10億分節約し、ブランド化された音声体験を好ましいコミュニケーション手段に変える。(Slang.ai の Web サイト上に記された説明)

電話窓口でひどい体験をしたことがある人は多いと思います。

自動応答メッセージを延々と聞かされ、用件に応じてプッシュボタンで窓口を選ぶ振り分けシステムに付き合わされます。

何度か選択肢を選んだあと、ようやくオペレーターにつながるかと思いきや、また長時間保留音で待たされます。

待った挙句に人間のオペレーターにつながった後、ここまでにプッシュボタンで電話振り分けマシーンに伝えてきたことを再度オペレーターに話して聞かせることになります。

このひどい電話体験は、最初からこちらの用件を口頭で伝えて、オペレーター側が適切に回答をくれればいいことです。その場で答えられない専門部署の確認が必要な内容なら、別途折り返し連絡すると切り分ければいい。電話をかけた顧客側が出来の悪いシステムに付き合わされているのが現状です。

これを「ロボットの人質状態」とSlang.aiでは表現しています。言いえて妙。

世界中で共通して、このひどい電話体験をしている人が大勢いることに着目したからこそ2000万ドルもの資金調達ができたわけです。

Slang.ai はジェネレーティブ AI 機能を使い、電話体験を合理化し、一般的なやりとりを自動化し、顧客サービスを向上させる。

Slang.aiを導入すれば、プッシュボタンでの分岐振り分け作業をなくし、用件を話せば内容から回答を直接返してくれるように体験を変えます。音声認識と、回答の自動生成というChatGPTで皆が驚いたアレを組み合わせることで実現しています。

ウソを返答しないようにするところに工夫は必要でしょうが、チャットAIを多くの人のペイン解消に使う非常に良い例です。


会話で得られる問い合わせ内容の分析機能も

同社はさらに、企業に電話の着信パターンに関するインサイトを提供している。顧客からの問い合わせに関するデータを分析することで、企業は顧客との再エンゲージメントの最適な機会を見つけ、顧客の購買意欲を高めることができる。

Web上のFAQではカバーできない顧客のニーズを、音声会話のやり取りで引き出すことができるのもSlang.aiを使う利点です。

人間の電話オペレーターの場合、コールセンターのように会話履歴を記録するシステムと、そのシステムに適切に情報を記録するオペレーターの教育が徹底されていれば、通話内容を分析することができます。

しかし小さな飲食店や小売店ではコールセンターのように通話履歴がすべては記録されず、電話に出た人によってムラができます。

Slang.aiの場合はすべての会話がテキスト化され分析対象となることも大きな利点です。

聞かれたことに答えるというパッシブな使い方が最初かもしれませんが、問い合わせの電話をくれた顧客に適切に質問をしたり、新商品の提案を入れたりすることも可能でしょう。

その時の反応を分析することで、顧客の真の不満点を見つけたり新商品に対する好意度を測ることもできそうです。

電話窓口が残っているからこそむしろ、顧客が口にする本音を分析できる。これはDX化が進まないと嘆く日本においても好都合かもしれません。


最先端技術を最大市場に充てるマスアダプション発想

個人的には不意に時間が奪われる電話は嫌いですが、避けられない電話対応を快適にしてくれるSlang.aiのようなチャットAIサービスは大歓迎です。

最先端のAIサービスをデジタル最先端な狭い市場に投入するのではなく、多くの人が共感するペインに投入するSlang.aiの目の付け所が素晴らしいと感じます。今回の「みんな電話で嫌な目に遭っている」というシンプルなペインに最先端のチャットAIを投入するという発想を見習いたい。

新し物好きは最先端市場を見てしまいますが、伸びしろはあれど未成熟で市場規模が小さいことが多いもの。最先端を最大市場に充てるマスアダプション発想は大切ですね。

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