文章読本③
「目で読む言葉」と
「耳で聞く言葉」がある。
例えば、次の文章を黙読してみる。
「この文章が面白いのは、
作者が園児たちの日常の様子を細かく書いているからだと思います。
特に、乳児の様子がよく書かれていると思います」
読めば文章の意味は十分伝わってくる。
だけど、この文章のおかしさに気付けない。
ところが、声に出して読んだり、この文章を耳で聞いたりすると、
この短い文章の中に「思います」という言葉が
二つもあることに違和感を覚える。
それから、冒頭の「この文章が」の「が」と、
「筆者が」の「が」、
この主格の「が」が二つも同じ文章の中にあると、
聞く言葉としては美しく流れない。
さらに、「細かく書いている」と「よく書かれている」の二重言葉。
これもいい文章にならない。
そういう点を踏まえて文章を書き替えてみると、どうなるか。
「この文章が面白いのは、
園児たちの日常の様子を細かく描いているからでしょう。
特に、乳児の様子がよく書けています」
続きは9月2日号の社説で。
(参考文献/外山滋比古著『文章を書くこころ』PHP文庫)