大学を卒業する1週間前まで就活が終わらなかった話【その3】
今日は【その3】です。
前回のお話はこちら。
2019年5月。大学4年生。
当時の僕は「音楽会社やイベント会社で働きたい」と思ってはいた。
しかし自身の経験からなんとなくそう思っていただけで、明確な志望動機や自分のやりたいことといった、肝心なところは何も決まっていなかった。
さらに持病である5月病の発症で就活のモチベ―ションが低下したこともあり、選考に参加した会社も少なかった。
この頃から、オファーボックスやアイルーツといったオファー型就活アプリを使い始めた。
これらは企業が興味をもった学生にオファーを送り、それに応じるか否かを学生が決める仕組みになっている。
つまり、学生を主体としたサービスである。
オファー系就活サービスの利点は2つあり、1つは企業からオファーが来るので就活が楽になること。もう一つは知らない業界や企業について知ることができることだ。
僕も上記2つの就活サービスを利用していたが、結果として上手くいかなかった。
なぜか?
就活の軸をなんとなく決めていたからだ。
就活の軸がちゃんと決まっていないと、何を基準にして会社を選んだら良いか分からない。
僕は『音楽業界とイベント会社』以外の条件は殆ど決まっていなかった。
これは、どの会社も受けたい理由は無いが、受けたくない理由も無いということでもある。
なので様々な会社からオファーが届いたとしても、どうすれば良いか分からず結局お断りしてしまうことが殆どだった。
稀に『良い感じのベンチャー』からオファーがあり「お、なんか良い感じの企業だな。向こうから来てくれたし、受かるでしょ!行くか!」となんとなく選考に参加していたが、毎回普通に落ちていた。当たり前の結果だった。
なんとなく選考に参加しているということは、その分志望度も高くないのである。
就活の軸を何となく決めた僕は、結局最後までオファー型就活サービスを使いこなすことが出来なかった。
そんな中、僕はオファーを受けた人材会社の選考に参加する。
その会社は自社HPで『人気No.1人材企業』と銘打っていたのだが、その名に恥じないくらいの人数の学生が参加していた。
志望度は低く、志望動機も曖昧だったが、人材業界でNo.1という確かな実力に惹かれたのを覚えている。
しかし実際行ってみると、意識が高い社員ばかりで辟易してしまった。
説明会の途中に代表の方が「こんな話を知っていますか?蓋をしたコップの中に閉じ込められたノミは、その蓋が外れたとしてもコップを飛び出ることはないそうです。」と限界を自分で決めるなという旨の啓発の話を始めた。
僕はそれを「僕はノミじゃないんだけどな」と斜めに聞くタイプなので、直感的にその会社は合わないと感じた。
ていうかその話、東洋経済オンラインに書いてあったぞ。さては今朝スマートニュースで見たな?
その後、場所を移動してグループディスカッションを行ったのだが、説明会にはいなかった別の社員の方が「こんな話を知っていますか?ノミは……」とまったく同じ話を始めたので思わずにやけてしまった。
2019年6月。大学4年生。
6月。周りがちらほら就活をやめる時期。
僕はまだリクルートスーツを脱げないでいた。
僕はこの時期、とあるイベント会社を第1志望として就活をしていた。
その会社の選考は1次、2次と通過することができた。
持ち前の素直な性格(何も考えていないだけ)と人を笑わせようとする姿勢が評価されたのだと思う。
次の選考フローは1週間の『体験入社』というものだった。所謂インターンである。
実質、この体験入社が最終選考だった。
結論から言うと、僕は体験入社で落ちた。
体験入社は楽しいことよりも辛い出来事の方が多かったように思う。
割合で表すと2:8くらいだ。事実、イベント会社の実を体感したり、社会人の方とお話するのは楽しかった。社長やマネージャーの方たちと一緒に会議に参加した時はワクワクしたし、とある企業イベントの企画案が採用された時には感動すらした。
デスクが隣だったプロジェクトマネージャーの女性の方とは親交を深めることができた。一緒にお昼ご飯を食べながら、お互いの恋愛事情や人生観について語り合ったのもよく覚えている。
最終日には『素敵な出会いをありがとう』というお言葉を頂き、僕は思わず涙ぐんでしまった。
年が近い社会人の方も、素敵な方が多かった。
僕の就活の相談に乗ってくださったし、社会人としての心構えについて教えていただいた。
普通の就活では味わえないような、貴重な経験ができた1週間だったと思う。
それでも、辛かったことの方が圧倒的に多かった。
一番の理由は、やる事を自分で探さないといけなかったところだ。
『これをやってください』というような明確な指示は無く、仕事をしている社会人の先輩や上司の方に『何かお手伝いできることはありますか?』と伺いに行かねばならなかった。
そういうバイタリティも選考基準の一つであったのだろうが、初対面の目上の方にグイグイいけるようなメンタルは持ち合わせていなかった。
また、会社の方と会話を重ねていく中で生じた疑問から、僕は悩みを抱えてしまう。
あるマネージャーの方が「新卒でここは止めた方がいいよ」とボソっと教えてくださった。
ある先輩は「もう一度就活できるなら別の会社を選ぶ」と冷めた目で答えていた。
僕はそんな社会人の姿を見ながら『本当にここで働きたいのか?』という疑問が湧き出た。
浮かんだクエスチョンマークの最適解を見つけられないまま、体験入社は終わってしまった。
結果はお祈りだった。
6月が終わり、7月。
リクルートスーツを脱げないまま、学生最後の夏が始まろうとしていた。