木製のパズルやゲームの開発に熱中して Development Story of Wooden Puzzles & Games (第4話)
第4章 人気のクワルト(4目並べ)を5目並べにできないか
1、積み木でクワルトをコピーして、孫と対戦
木工屋さんから丸や四角の古い積み木をいただいた。
すぐに思いついたのが4目並べの[クアルト]だった。
早速、四角の4x4マス盤も手作りしてプレーしてみた。
ルールが簡単なので6歳の孫とも結構遊べたが、何回もプレーしていると天才孫が負けない方法を覚え、引き分けが多くなり飽いてきた。
(下の写真で4つ並んだ所は?)
そこで、5x5マスの5目並べにできないか考えてみることにした。
しかし、形(丸、四角)、高さ(高、低)、色(白、黒)、穴(あり、なし)の4つの属性と2水準のところを、5属性にすればコマ数が32個になってしまう。また、例えば高さを高、中、低の3水準にするとコマ数は24個になるが、他の水準を有する駒が各12個に対して3水準の駒は8個になってしまう。
なかなか難しい。1991年の開発以来4x4のままなわけが分かってきた。さあ、どうする?何かいいアイデアはないのか?
2、5×5マスで5目並べに挑戦
色々検討した結果、4属性の2水準は変えないで、コマの上側と下側が同じ形状であることに着目して、片側だけ穴有りのコマを8個追加した。追加したコマには他の3属性が均等に含まれている。
5×5の25マスに対してコマは24個なので、中央のマスをオールマイティのジョーカーマスとするアイデアで解決した。
中央のマスにジョーカー印を記入してもいいし、中間の高さのオールマイティ駒を作っておいてもよい。
5×5マスのマルチ五目並べ[クイント]が完成した。
3、6×6マス、36ピースで[アラカルト]完成
5x5マスの盤で五目並べができたが、さらに6x6マスで4つの属性(2水準)のコマを使って五目並べができればより複雑で面白くなりそう。
5x5マス用の8個の追加のコマを上、下 色違いとし、6x6マス用の12個のコマは上、下でりんごマーク有り、なしとした。
片側リンゴのコマの側面に目印の溝をつけて、6x6追加用と判別できるようにした。
積み木マルチ5目並べ[アラカルト]が完成した。
4、同一形状の駒でマルチ五目並べができないか
1)、携帯用試作品からキューブマルチ5目並べ
初期の目標は達成できたが、形状と高さの属性を避けて、すべて同一形状のキューブとすれば各水準の個数が増やせて、クアルトの形態から脱却できる。また、素材の加工が容易となり,容器も小さくなるためコストダウンにつながる。
一辺が18mmのキューブで、携帯用の4属性(2水準)の駒を試作してみた。
色(ピンク、グリーン)、中間マーク(○,◇)、外側ドット(2個、4個)中央マーク(あり、無し)の各水準が裏面の色を変えることで、合計でマス目と駒の数と同じ36個ずつになる。
2)、キューブマルチ5目並べの完成
試作の結果、同一形状にするメリットが大きいので、立方体に統一し、色の属性を素材の木の濃、淡に変えて南洋桜とタモ材で3cm角にしてみた。
これに残り3属性(中央の○と×、中間の♡と♢、外側の1個の♤と2個の♧)のマークをレーザー加工で片面だけに印字した。
色の水準が表、裏同じなので8種類の水準は各18面になったが、裏面が2色だけなので、普通の五目並べやクイシキオのルールに準拠したスライド五目なども遊べるようになった。
さらに、次章で紹介する[神ニャン駒]を開発するきっかけにもなった。
3)、上側と下側の色が異なるコマに統一するとどうなるか?
まず、駒の裏側にも表とすべて異なるマーク群を印字することにより、前項のセットの水準が各1面だったのが2倍になる。
また、4×4用が16種類、5×5用が24種類の駒であったのが、1つの駒が1つの属性を既に持っているので2×2×2=8種類が1セットになってしまうのだ。
つまり、4×4用は2セット、5×5用は3セット、6×6用は4.5セットになる。
さらに、駒がリバーシブルなので5×5マスでクイキシオや、6×6マスでミニオセロ(リバーシ)やミニ連珠など従来の盤上ゲームも可能になる。
駒はブビンガとヒノキなどとの張り合わせで、3属性のマークをノコ盤とボール盤で機械加工して製作した。
これまで色んなバリエーションのマルチ五目並べセットを開発してきたが、駒を上下2色の立方体に統一したタイプは、ブビンガの宝石のような木口(木目に直角な切断面)を生かした初めての商品なので[ブビンガ五目]と命名した。
クアルト由来の[マルチクイント]ゲームのルールは交互に好きなコマを好きなマスに並べていって、縦、横、斜めに同じ水準を持つ5目めのコマを打った方が勝ちとなる。
なお、これ以外にも持ち色を決めて対戦する[Multi Gomoku(マルチ五目)]や1目に限り挟んでひっくり返せる[Reversi Gomoku(リバーシ五目)]やクイシキオ類似ルールの[Slide Gomoku (スライド五目)]も開発した。
5、8×8マス、64ピースで[マルゴ/マルゴニア]アブストラクトゲー ムを開発
1)、リバーシ(オセロ)の駒で試作
孫とリバーシ(オセロ)をしている時思いついて、リバーシもできるマルチ五目駒を作ってみることにした。
取り合えず、(暇に任せて)猫の顔で3属、2水準の8個のゴム印を彫り、シャチハタのTATインク(黒と白)で64個の石(駒)にスタンプした。
属性は目と鼻とひげで、リバーシ五目を想定して、各石の表と裏はすべて逆の水準になるようにした。
8×8マスのリバーシ用の盤で試してみると、予想した通り本格的な盤上ゲームになりそうだ。しかし、天才孫の意見では「駒が多すぎてほしい駒を見つけられない」とのことだったので、側面も2色にして持ち色で駒を均等に分けることにした。
リバーシは白、黒の2色だけでできるので、もしもこれが普及してしまったら従来のリバーシ(オセロ)用石がいらなくなるかもしれない!?
2)、MuiGo/MulGonia (マルゴ/マルゴニア)ゲームの誕生
早速、約33㎜の丸棒を買ってきて、表面を2色に分けて塗装した後、8㎜厚でスライスした。次にレーザー加工でイラストを印字した後、裏と表をアクリル絵の具で彩色した。
量産時はシルクスクリーン印刷(タイ製)を予定している。
駒の各水準の組み合わせは8種類だから、全く同じ組み合わせの駒は4個ずつで、合計32個が持ち色となる。
3)、マルゴ(MulGo)ゲームの遊び方
①、黒(又は濃色)が先手で、後手の白(又は淡色)と交互にうちます。
打つ位置は罫線の交点ではなく、マス目を使います。
②、総コマ数とゲーム盤
総コマ数は側面各色32個ずつの64個で8×8マス盤を使用します。
③、持ち色を縦、横、斜めに5つ並べた方が勝ちです。
または、持ち色過半数(3個以上)で、3属(目、鼻、ヒゲ)各々2水準
(猫目と丸目、三角と丸、2本と3本)の6種類のマークのうち、同じマ
ークを5つ並べても勝ちとなります。
④、持ち色とマークを含めて、先手の三々、四々は禁じ手で、後手が次の
手を打つ前に指摘したら黒の負けとなります。
4)、マルゴニア(MulGonia)ゲームの遊び方
①、打つ位置は罫線の交点ではなく、マス目を使います。
②、総コマ数とゲーム盤
総コマ数64個の場合は8×8マス盤を使用します。
駒は側面が持ち色の駒を32個ずつに分けて使います。
③、1打目から4打目までは盤の中央部の4マスに、黒(又は濃色)が先手
で、後手の白(又は淡色)と交互にうちます。
5打目から駒は好きなところに打つこができるし、縦、横、斜めに1
目だけ挟んだ相手の駒は裏返しにできます。
④、1度裏返しされた駒(自駒)を挟んでも裏返しできません。
三止め、四止めの相手の駒も裏返しできません。
⑤、駒の裏面は相手の持ち色で、3つの属性のマークはすべて表のマーク
と異なっています。
⑥、持ち色を縦、横、斜めに5つ並べた方が勝ちです。
または、持ち色過半数(3個以上)で3属性(目、鼻、ヒゲ)各々2水
準(猫目と丸目、三角と丸鼻、2本と3本ひげ)の6種類のマークのう
ち、同じマークを5つ並べても勝ちとなります。
⑦、持ち色とマークを含めて、先手の三々、四々は禁じ手で、後手が次の
手を打つ前に指摘したら黒の負けとなります。
⑧、最後まで勝負がつかない場合は盤上で持ち色の駒が多いほうは勝ちと
なり、同数の場合は後手の勝ちとなります。
6、マルチ五目並べの特許出願
ゲームのルールや遊び方は自然物ではないので知財権は出願できない。
しかし、コマやゲーム盤は従来品(クアルト)より新規性と進歩性(同業
者が容易に思つかない)があれば意匠登録や特許出願ができる。
過去の例では、旧知のリバーシを商品化したオセロの意匠登録や、同じ
く旧知の二抜き五目(朝鮮碁)をアメリカで商品化したPENTEのコピーラ
イトなどがある。
筆者が知財権を必要としている理由は、個人企業でいくつも開発品を抱
えているため商品化に時間がかかるからだ。
今回開発したマルチ五目並べはバリエーションがいくつもあるので、意
匠登録ではなくてボードゲームセットの特許出願を選択した。
特開2020―010809 で公開中。
[第5話(神ニャン駒40個1セットで十盤勝負)に続く]