木製のパズルやゲームの開発に熱中して Development Story of Wooden Puzzles & Games (第6話)
第6章 組み立てキューブパズル(箱詰めパズル)への参入
1、キャビティキューブパズルの開発
木の盤上ゲームセットの開発が一段落したので、知育玩具としても知られているソーマキューブのような新しい組み立てキューブパズルを開発出来ないかと考えた。
パズルショップ[トリト]さんのホームページで知った小田原さんの[箱詰めパズル天国]を覗いてみると、箱詰めパズルの基礎や応用、開発例が盛り沢山に記載されていた。そこで紹介されていた石野さんの[ちょいとパズルでも]を開いてみたら、世界中の作家の作品がまるで辞典のように大量にリストアップされていて、とても参入できそうになかった。
しかし、ユニーク解(一つだけの答)の追求など、パズルとして、より難解な方向へ向かっている感じがしたので、まず、初心者や年少者、高齢者などが取り組みやすいパズルを目指すことにした。
特に、4×4×4ユニットのキューブより大きいパズルはピースの数も増えて組み立てが難しくなる。
入り込む余地が無ければ隙間をつくるしかないので(?)、空洞(Cavity)をつくることにした。キャビティキューブ パズル(Cavity cube puzzle)の誕生である。
キャビティキューブパズルとは、n×n×nユニット(以後nXと略す)の6面体の内部に(n-2)×(n-2)×((n-2)ユニット相当のキャビティを有するキューブを複数個のピース(ポリキューブ)で組み立てるパズルである。
【ピースを構成するポリキューブとは1ユニットのモノキューブの面と面を接着して複数個つないだもので、n個のユニットのポリキューブをn―キューブと呼ぶ。
平面型のポリキューブはプレイナーポリキューブと呼んで3次元ポリキューブと区別されるのだが、筆者は使うのはほとんど平面型なので単にポリキューブと呼ぶ。】
キャビティキューブの特徴は、まず6つの面を壁のように組立てるので、取り組みやすいこととユニット数を少なくできることなどだ。
また、例えば7Xのキャビティキューブには5Xのキャビティキューブを、同キューブのキャビティには3Xのキューブを入れ子(中子)にできる。
1)、4Xキャビティキューブの試作
最初の試作品である4Xのキャビティキューブは、9-キューブ4個、10-キューブ2個の合計6個の形状の異なるピースの組合せである。
2)、5Xキャビティキューブの試作
この試作品は5Xのキャビティキューブである・
ピースはすべて形状の異なる6個のピース(ポリキューブ)で、中央に1ユニット分の窓を開けている。
次の例は5Xのキャビティキューブで、ピースは12個のポリキューブだが、まず、各2個ずつの凸凹をはめ合わせて1つの面としてから、ボックス状に組み立てる。はめ合わせるピースの組み合わせが様々なので難度は少し高くなる。
3)、7Xキャビティキューブパズル
20mm角のローズウッド343個(ユニット)で、7X(24ピース)と5X(12ピース)と3X(6ピース)のキャビティキューブが完成した(モノキューブで3Xのキャビティを埋めてもよい)。
組み立てパズルとしては超難問に見えるが、3Xキューブから5Xキューブへと順々に組み立てていくと、従来の7Xのソリッドキューブほどは難しくない。
このように、キャビティキューブパズルは、従来の、ソリッドキューブをやみくもに積み上げるイメージのパズルが、各面を組み立てた後ボックス状に組み上げる新しい概念の組み立てキューブパズル(箱詰めパズル)となった。
このパズルは初心者でも取りつきやすく、年少者の知育や年長者の脳トレなどにも活用できる。
また、ユニットキューブの総数が少なくなるため、より大きな立体パズルに取り組みやすくなる。
これらは特許出願中で、公開されている。 特開2020-188853
2、シンメトリーキャビティパズル
1)、5Xシンメトリーキャビティパズル
形状の異なる全てのピースが裏返しても同じ形になる線対称形のピースで5Xと3Xのキャビティキューブを組み立てる。
3Xはモノキューブ(サイコロ)を中央においても、外して空洞にしてもよい。
2)、シンメトリーカラーボックス
まず、線対称形の12ピースを2個ずつ組み合わせて、形状の異なる6個の線対称形セットにする。
それで、内部に3X相当のキャビティをもつ5Xのボックスを組み立てて下さい。
線対称形は裏返しても同じ形で裏面の色が異なるので、組立て後に面の色を変えることができる。
3)、シンメトリー貯金箱パズル
6個の形状の異なるシンメトリーピースで5Xのコインボックスができた。家内は500円硬貨の貯金に使っている。
3、Diagonal Symmetry Box puzzle
1)、対角線対称形とは
正方形は2本の垂直二等分線と2本の対角線を軸とした線対称形だが、立 方体が面どうしでくっついた平面型ポリキューブでも線対称形(ひっくり返しても同じ形になる)を作れる。
数学など少し調べてみたが、線対称形をさらに細分化した名称が見つからなかったので、対角線対称[Diagonal (Line)Symmetry] は筆者の造語である。
前項までのシンメトリーキャビティキューブでは主に垂直線対称形の例を紹介したが、ここでは対角線軸を有するすべて形状の異なる線対称形のポリキューブで組み立てたDiagonal Symmetry Box Puzzleを紹介する。
2)、4X対角線対称ボックスパズル
美しい対角線対称形に出会って最初の4Xボックスの試作品は2種類のピースの組み合わせと3種類のピースの組み合わせだった。
2種類の方の組み合わせが見つかった時は筆者にとっては美しい小発見で、うれしくて眠れなかった。
3種類の組み合わせから、形状の異なる6個のピースを探すのに1か月以上かかり、一旦あきらめたが、5Xで何とか見つかったので再挑戦してやっと完成した。
3)、5X対角線対称ボックスパズル
BCP(Bill Cutler Program)のようなソフトを持たないので、試行錯誤で1か月近く費やしてすべて形状の異なる6個の対角線対称ピースを見い出し、5Xの対角線対称ボックスが完成した。
裏面を異なる色で彩色すると裏側にひっくり返しても同じ形なので全面同じ色で統一することも出来る。
さらに、6個のピースを各々2つに分割して、12個の形状の異なる対角線対称のピースの組み合わせを発見した。
(第7話に続く)
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