ギャンブルで肝心なことーー伊集院静著『大人の男の遊び方』を読んで
伊集院静著 双葉文庫 2017年出版
ダンディーな友達に本を贈ってあげようと思って、近所の本屋さんに行ったら、最近亡くなった伊集院静の本を集めたコーナーがあって、この本が面白そうだと思って購入した。自分用も購入して読んでみた。
伊集院静さんのことは、山田詠美のエッセイを通して知っていたが、彼が書いた本を読んだことはなかった。一度、本屋さんで見かけた時、『大人の流儀』というタイトルで何冊も出版してて、なんなんだろ、この人、と思って読む気がしなかった。結局、読まないうちに死んでしまったことが、とても悔やまれる。そして、私なりの判断で、一番彼らしいと思われる『大人の男の遊び方』というタイトルのこの本を購入したのであった。
読んでみたら、このタイトルほど「男の遊び方」が書いてあるわけではなかった。始めの方は割りと楽しかったが、ゴルフの話がちょー長くてたいくつだった。麻雀の話は、結構詳しく書いてあったので、ちょっと触ったことがある人だったら、おもしろいのかもしれない。でもいわゆる「大人の男の遊び」が麻雀、ゴルフというのはとてもさびしいことで、それは、双葉文庫の編集が悪いのか、伊集院静がそれについてばっかり書いていたのか、私には分からない。
おもしろかったのは、賭けごとの話で、伊集院さんは、先手必勝のために「人より早く、人より丁寧に、人より一歩先に臨戦状態をこしらえておくことが肝心なのである」といった文章だった。
「ギャンブルもすべて、打つ前の準備が肝心なのである」そうである。いわゆるギャンブルの話となると、よく言われるのが、負け方を知りなさい、ということだと私は思っていた。負け始めたら、キリが良いとことで早めに賭け事をやめなさい、という話なんだが、それは当たり前で伊集院さんもそんなことを多少書いてた気がするが、珍しいな、と思ったのは、「臨戦状態をこしらえておくことが、肝心」という言葉だった。アスリートで言ったら、いつでもスタートダッシュができる状態をつくっておけ、ということなんだろうか。こういうギャンブルの心の持っていき方は、私は考えたことがなかった。ので、なかなか面白かった。
でも、この本はそんなにお勧めではなかった。贈った友達に悪かったな、と思いつつ、もっと良い伊集院静の本を他にも読んでくれればいいな、と願っている。