職人のドキュメンタリー
職人業界のあるドキュメンタリーをみた。
職人業界の離職率の高さの問題を解決するために、ある左官業の会社は改革に乗り出した。
本来は修行をはじめてから5年しないと触らせてもらえなかったコテを初日に持たせ、丁寧に教える。動画を撮って、同時にベテランとの映像と比較して、すぐに上達していく新入社員。その新入社員は南アフリカから来た女性で、あっという間に壁を塗れるようになっていた。
最初は慣習から飛び出した取り組みに「ふざけんな」と反対していたベテランは、「俺が若いときはもっと苦労して技をぬすんだもんだ」と、本人が若い頃の苦労を持ち出して反対していた。当時は一切教えてはもらえず、「見て盗め」という職人業界の常套句が飛び交い、教えてもくれないのに「そんなこともできないのか」と言われながら我慢してやってきたという。
そんなベテランも今では若手を育てるリーダーになっている。「若手を育てるにはウチら(ベテラン)が変わらなければならない」と言っていた。全ての世界に通底する視点なのではないかと思った。先にいる奴は立場を守ろうとする。「保守」というのはその時点での自分にとって都合のいいことを守ろうとする本能的なものでもあると思う。動物にとっての自分の縄張りを守るのと似ている。おしっこなどのマーキングをしないけれど、人間にもそうした「自分の領域を守りたい」という本能は働くだろうし。
この「○○年しないと○○はさせない」とか「見て盗め」とかいうよく聞くやつって、すでに技術を持っている人間、要するに既得権益層を都合よく守るシステムでもあるよなと思っていたので、この左官会社の改革は素晴らしいと思った。映像などの比較で若手がどんどん成長したら、ベテランは危機感を覚えるだろうし、ベテランという違った付加価値を見出していかなくてはならなくなる。
離職率は大幅に減少し、若者が入り、かつ続くようになったので、平均年齢も年々低下しているそうだ。楽しそうだった。
15分くらいの特集だったけれども、良いものを見た。南アフリカといえば、DIE ANTWOORDと第九地区、チャッピー。そして大統領。
ところで文章に基づいてなのか自動で提案してくれるAI生成っぽい画像が面白い。