米ポートランドの日系コミュニティRadio。
■オレゴン州ポートランド発。日系コミュニティRadioが面白い。
ちょうど1年ほど前ですけど、偶然youtubeで見つけたRadio番組のファンになりました。「Ikoi no Kai」という、アメリカはオレゴン州ポートランドにある日系人社会向けのコミュニティRadioです。
日系のどの世代がお聴きになってらっしゃるのか、ランチタイムに「Radio Hirugohan」という番組名で昭和初期から戦後1950年代にかけての歌謡曲、流行歌を特集、現在までに9編がアップされています。この各エピソードの選曲と構成が実に素晴らしいのです。
例えば、エピソードの7回目が「Geisha Singers: The Ichi-Katsu Era / 芸者歌手:市勝時代」といううぐいす芸者歌手の特集。それも1935年頃に「市勝時代」と言われるほどの人気を誇った市丸と小唄勝太郎両姐さんの登場ですから、まさに待ってました!でした。
Ep 007 - Geisha Singers: The Ichi-Katsu Era / 芸者歌手:市勝時代
ずっと以前から、私はうぐいす芸者歌手の再認識、復権を願っていたんですが、その狼煙が太平洋の対岸、ポートランドから揚がろうとは思ってもみませんでした。驚きました、我が意を得たりと。
近年の日本でもうぐいす芸者歌手の音源が、レーベルの成約はありますが、オリジナル原盤で複刻されています。またセット物のコンピ盤も通販カタログでぼつぼつ発売されはじめました。
でも、なかなか再認識にはほど遠い状況か。
ここで一曲。「Radio Hirugohan」と曲がダブっても面白くないので、違うものを。
検番出身の本物の、そして最後の芸者歌手となった神楽坂浮子姐さんのデビュー曲「私なんだか変テコリン」。作曲は古賀政男先生のお弟子さんらしい。CDの解説には、弟子名義でも実は古賀先生(コロムビア所属)の作があるという浮子姐さんの談話が載っています。この曲、実は古賀先生作ではないかと睨んでいます。
■「Radio Hirugohan」の各エピソードを覗く
Ep 001 Various Artists
初回は番組の内容紹介を兼ねて、有名どころの歌手によるオムニバス構成。
Ep 002 - 淡谷のり子
2回目は淡谷先生。皆様のNHKが放送した朝ドラ『ブギウギ』のお陰で再認識も進んだことでしょう。
Ep 003 - 藤山一郎
藤山一郎先生はあまり熱心に追っかけてなかったんですが、この番組で通しで聴いて、モダンな歌手だったと認識を新たにしました。
Ep 004 - 山口淑子 / 李香蘭
昔、李香蘭こと山口淑子氏の自伝を呼んで感動しました。20世紀前半の現代史の勉強にもなる。満州国時代の、後のエピソードにも登場するベティ稲田とディック・ミネとの交友も面白い逸話がいっぱい。
Ep 005 - 笠置シヅ子
説明は不要でしょう。
Ep 006 - ディック・ミネ
モダンボーイ。”ディック”というニックネームがなぜ付いたのかはよく知られた逸話ですね。またディックがギターを手にして唄う姿に元祖日本のギターヒーローこと田端義夫が憧れて歌手を目指したのもこれまた有名。
Ep 008 - ベティ稲田
いわゆる日系二世の帰国子女歌手とでもいうか、来日時は日本語がまったく出来なかったそうな。ジャズとハワイアンでWW2後も活躍。
Ep 009 - 中野忠晴
中野忠晴は日本のジャズコーラスの創始者といっていいほどなのにまったく忘れ去られている、というお嘆きをあるサイトで拝見しました。そういう中野をEp 009として特集する「Radio Hirugohan」のセンスの良さをとても感じますね。私も勉強になりました。
Ep 010 - 美空ひばり
美空ひばり特集。文句の付けようがない選曲。かつて幻と言われたデビュー曲「かっぱブギウギ」から「東京キッド」、1950年代に入っての「港町十三番地」、ひばりの歌唱力だから可能だった和風の「車屋さん」、和洋折衷の「ロカビリー剣法」と傑作二曲。演歌時代以前が最高である。
■今後の「Radio Hirugohan」に期待。
「Radio Hirugohan」のエピソードは、画像で構成された動画も含めて、歌手の世界観や時代背景を理解する上でとてもよく出来ていると思う。こういうチャンネルがあると助かります。
今後のアップに期待大。次回は徳山璉(たまき)の國策歌謡でも特集していただきたいものです。
(了)