vol.3 学校を再び学校に
「学校づくり」と聞いて、どんな工程を思い浮かべますか?
お金集め? 校舎づくり? カリキュラム設計? 認可申請書類の作成? 生徒募集? 学校の広報? 校舎のインフラ整備?
全部その通りなのですが、大事なことを忘れていませんか?
(サン、ハイ)・・・そう、草刈りです!
というわけで、今回は準備室の塚原がお届けします。
ちょっと1回、中庭をきれいにしてみよう
放っておけば草はどんどん生えてきます。でもここはまだ学校になる途中の場所。まだ生徒も通っていませんし、ここで働く人もいません。学校としての営みがまだ無い。草はのびのびと生え続けます。
旧佐久西小学校の特徴の1つとして、校舎と校舎の間に、広めの中庭があります。廃校となってから約10年。これまでは町の資産として町役場の皆さんが管理してきてくださったとはいえ、さすがに鬱蒼としています。できることなら、開けたくないパンドラの箱。
以前、佐久西小学校の卒業生からお話を聞く機会がありました。
この中庭は中央が放射線状の花壇になっていて、学年ごとに手入れをしていたとのこと。
今年度からは町役場から引き継ぎ、茂来学園として土地の管理を始めていて、佐久穂町を拠点に畑や公共施設の管理や草刈りのお仕事をされているプロ(Fさん)にも手伝ってもらっています。
中庭に降り立ったFさん曰く「今は蔓や土でごっちゃになっていますが、この下に石板があって、たぶん円状の通路があったと思います」とのこと。
いまは落ち着いていますが、来年の春になればまた草が芽吹いてきます。ですが、今のうちに来年の準備(花壇だった場所と通路だった場所をと区分けする)をしておくと、だいぶ良くなると。
塚原 「やりますか」
Fさん「やってもいいですけど・・・大変ですよ?(笑) 大人数でやったほうが」
塚原 「みんなでやりますか」
といった経緯があり、2024年11月23日、「みんなで中庭をきれいにしてみる」をやってみました。
作業当日の模様
急な呼びかけにも関わらず、20名強の方が集まってくれました。心強い。
小中学校と食堂のスタッフ、保護者、子どもたち、そしてFさんと準備室メンバー。
ここからは写真でご覧ください。
作業開始。
みるみるうちに復旧が進んでいきます。
2時間ほどかけて、ひとまずの復旧が完了しました!(すごい)
「やってみることでわかること」があった
遡ること7年前、あれは2017年の秋のこと。
僕はその頃、大日向小学校の設立準備スタッフとして佐久穂町に住みはじめました。
住んで最初の仕事が「旧佐久東小学校の校庭の銀杏を拾う」ことでした。
大日向の方から聞いた話によれば、ここがまだ学校だった頃、子どもたちが校庭の銀杏を拾って、皮と実を取り除いて、種を乾燥させて、町の直売所に売りにいっていた、そしてその売上で本を買って、銀杏文庫と呼ばれていた、と。
よし、まずはそれをやってみようということで、11月の下旬にしては極寒の日、銀杏を拾って、校舎の片隅で眠っていた二層式洗濯機を運びだしてゴロゴロと銀杏を回し、乾燥させて・・・とやってみたのです。「学校が再び学校になるって、こういうことなのか・・・こういうことなのか?」と半信半疑で、芳しい銀杏の実を剥いでいたことを思い出します。途中から雪も降り出したりして。
この場所がまた学校になるということの実感が湧いてきはじめた瞬間でした。
学校づくりはとても大きなプロジェクトなので、時として手触り感を見失うことがあるのですが、「折々にきちんと自分の手を動かしてみることって大事!」という信念があって、今回の「やってみる」を企画したという背景もあります。
動的な学校づくり
かつての面影を少しだけ取り戻した旧佐久西小学校の中庭。ぼんやり見渡しているだけでも、俄然、未来のイメージが湧いてきます。
この屋外空間と地続きの校舎1階は、前期課程(中学生年代)の教室となる予定です。いま居る中学生の姿を思い描きながら、ここでどんな活動ができたら楽しいだろう、と想像が膨らみはじめます。ちょうど円を描く形になっているので、ここなら全員でサークルになれるかな、とか。焚き火をやるのもいいね、とか。みんなでベンチを作って置きたいなあ、とか。
鬱蒼としていた中庭だけを見ていてはやはり気づけなかったことです。
パンドラの箱だなんて言ってごめんなさい。
vol.1の「校舎のおはなし」でも触れられていますが、校舎のリノベーション工事も「やってみてわかってくること」がとても多く、最初から全てを見通しきることはできません。廃校を活用することとはそういうことなんだなと思っていて、自然を相手に折り合いをつけていく作業、もしかしたら農業や林業に近いのではと思っています。
書類作成やカリキュラム設計などが「静的な学校づくり」のプロセスだとすれば、リノベーション工事や中庭の整備などは「動的な学校づくり」のプロセスと言えそうです。
「動的な学校づくり」はその字のごとく、常に状況が動き続けるので、果てがありません。
でも初めからそういうものだという前提に立てば、これほど面白いこともありません。
いまの大日向小学校と中学校はまさに動的な要素がたっぷりな学校なので、その次の学校づくりのプロセスも自ずと動的になるという、当たり前の話なのかもしれません。
おわりに
さて、これが2024年最後の記事となります。
中等教育学校の開校目標まで、あと467日。
2025年にまたお会いしましょう!
追伸:
この場をお借りして改めて、中庭の復旧作業にご参加いただいた皆さん、ありがとうございました! 今回は残念ながら参加できなかった皆さんも、また次の機会に!