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コラム(1日)、日本の金融政策につきまとう“不可解さ”、突然の政策転換と情報リーク

日米の金融当局は30日から31日にかけ金融政策決定会合とF O M C(公開市場委員会)を開催した。結果は周知の通り。日銀が0.25%への利上げと国債買い入れ額の半減(6兆円→3兆円)を決めたのに対して、F O M Cは9月利下げの可能性を示唆する内容。両国とも事前予想の範囲内の決着だったが、日銀の決定には大いなる“不可解さ”が付き纏っていた。一つは31日に未明に決定情報がリークされたこと。いつものことといえばそれまでだが、ブラックアウト(情報開示の厳格な遮断)を厳格に守っているF R Bに比べると、日銀ならびに日本政府の対応は相変わらずダダ漏れだ。もっといえば意図的な情報漏洩としか思えない。2つ目は植田総裁の発言が突然、従来に比べ180度転換したことだ。事前説明もなくいきなり方針を転換するやり方は、日銀不信を招く原因になる。日銀の独立性とは何か、改めて気になる事態だ。

まずは植田総裁の発言。同氏はこれまで「円安は基調的な物価情勢に影響を及ぼしていない」との趣旨の発言を繰り返してきた。3月以降の決定会合でも足元の円安と物価上昇を無視して、基調的な物価上昇を待つ姿勢を示していた。その総裁が今回は「円安による物価への悪い影響を予防するために利上げする」との説明を行なっている。これを捉えて元日銀審議委員の野村総研・木内登英氏は、「(これまでは)発言内容が円安容認と受け止められた。一方、今回は円安により物価が2%を超えて上昇するリスクを懸念、『悪い円安』に配慮しており、従来の説明から180度転換した格好だ」と指摘する。植田総裁にやや同情的な見方だが、こうした変化は総裁の独自の判断ではないだろう。財務省は6月末から7月にかけて5兆5348億円の為替介入を行ったと昨日発表している。政府与党内で円安防止論が急激に高まり、日銀もこうした声に応えざるを得なくなったのではないか。だとすればあまりにも場当たり的だ。

もう一つは決定事項の事前リークだ。メディアはこれを“特ダネ”と喧伝するのだろうが、とんでもない話だ。ブルームバーグによると31日の昼ごろ、世界中のトレーダーやアナリスト、ジャーナリストが情報を求めて日銀のウェブサイトにアクセスした。すると、「現在アクセス集中などにより一時的に閲覧できません」というメッセージが表示されたというのだ。この日の未明、主要メディアは決定会合の中身を事前に報道している。リークしたのは誰か判然としないが、おそらく日銀ではなく政府関係者だろう。狙いは利上げのサプライズ回避に向けた環境づくりではないか。古色蒼然としたやり方だ。情報への公平なアクセスへの配慮などまるでない。挙げ句の果てに決定情報を周知すべきWebサイトはアクセル不能だったという。これはもう完全なガラバゴス化だ。特殊な日本の特殊な人たちが、特殊な情報操作を行なっている。日銀の独立性など語るに落ちる。これではいつまでたっても世界と対等には戦えない。


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