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「Lullaby」に寄せる想い~素人のちょっとした挑戦~

これから書くことは、あくまでも私個人の想いです。それ以上でも以下でもありません。その点はどうぞご理解下さいませ。

私は自力で作曲が出来ないので、何人かの個性の違う音楽家の手を借りて楽曲を制作しています。音楽家にとって私はクライアントの一人でしかありません。私の依頼は、数ある仕事の内の一つとして受けているに過ぎません。でも私にとっては1曲1曲が大切な曲です。モティーフを作るのに何年もかかる場合もありますので、思い入れがあります。でも音楽家にとってはただの1曲に過ぎません。合作をしていると音楽家との温度差というのはどうしても感じます。

「Lullaby」は、ピアノソナタ第二楽章として制作したものです。現在は2つの楽章が出来上がっていて、あと二つ揃えば完成です。このソナタを委嘱したのは、ジャズやポップスが得意な若手の音楽家です。彼は初め、私の作るモティーフを触ることに難色を示しました。彼が言うには、確かに大学でクラシック音楽は学んでいるが、今は専門にしていないので、そういう自分がクラシカルな素材を使って曲を作ることが良いのか分からない、と。でも私は「だから良いんです」と言いました。私がやりたいのは、普段クラシック音楽を聴かない、ポップスで耳を慣らしている人たちにも響く曲が作りたい。そのためにはクラシック音楽以外の音楽精通している人の方が良い。

アナタと作る音楽は、アナタと私の組み合わせでないと出来ない音楽でありたい。クラシカルな素材をクラシックとして作るのは当たり前。そんなことをしても誰も聴かない。むしろクラシカルな素材をジャズやポップスの視点から見つめ直したスタイルで書いた方が良い。クラシック音楽の範疇で留まらない幅広い音楽の感性で作って欲しい。だから、アナタの音楽性を前面に出して作曲して欲しい。むしろその方が良い。そう伝えました。彼は私の言葉に水を得たのか、今は私の依頼を楽しんでくれているようです。仕事として割り切られるよりも、楽しんでもらった方がきっと良い曲が出来ると思います。音楽家に仕事をしてもらいやすくするのが私の役目だと思っています。

ピアノソナタは確かにクラシック音楽の一つのジャンルです。でも私はそれをクラシック音楽の範疇に押し留めておく必要はもう無いだろうと思っています。もっと自由に解釈して、人々がいろんな音楽を楽しんでいるように、いろんな角度から作曲されても良いんじゃないかと思うんです。だからポップスを聴いている人でも、当たり前に楽しめるピアノソナタが有っても良いんじゃないかと思いました。だから私はこの若手音楽家と一緒にピアノソナタを作ろうと思いました。

しかしこれはあくまでも私の想いであって、音楽家の想いではありません。「合作」をしているとどうしても作品と音楽家が結び付けられやすいですが、私の場合、コンビで作曲しているわけでなく、相手はプロの作家であり、私とは切り離された存在です。それについては付言しておかないと、誤解を招く恐れがあります。出来た物が音楽家の感性であると認識されてしまうのは避けねばなりません。

第二楽章を作る時、音楽家からタイトルを「子守唄」にしてはどうかとの提案がありました。私の作った二つの主題(冒頭のAとB)から着想したようです。私は即座にOKしました。実に名案。彼が言うにはタイトルがあった方がイメージしやすく作りやすいのだとか。私もリスナーが曲を聴く際に何か指標になるものがあった方が良いと思ったので快諾しました。タイトルを付けたからといって、そのようにリスナーが聴いてくれなくも良いのです。音楽は自由に聴けば良いことですから。ポップスにタイトルがあるのは当たり前ですので、むしろ私は出来る限り曲にはタイトルを付けたいと思っています。

こうやって素人の私がプロの音楽家とやり取りしながら曲を作るというのは、楽しい面もありますが辛い面もあります。当たり前ですが、相手は経験も性格も違う他人ですから、すれ違うことは往々にしてあります。しかし素人だからと言って、私は安易に妥協はしません。そんなことをしたら、私の作りたい音楽は作れないし、自分の納得がいく物に成りません。少ないながらも、自分が汗水たらして働いて貯めたお金を投じているのですから、相手がプロだろうがそこは譲れない。ですからディスカッション大切なのです。

「Lullaby」というタイトルが決まった時、この曲で私は両親の歌う子守歌で眠っている子供が夢を見ている風景を描きたいと思いました。前半は両親の歌う子守歌。中間部は子供が見ている夢です。ヒーローになって悪者と戦っているのでしょうか?アップテンポに変わり躍動的になります。こういう風景を音楽で表現することにも挑戦しています。

私がやりたいのは、歌詞の無い「歌」です。ポップスはメロディーと歌詞気持ちをリスナーへ伝えます。私は歌詞が書けないので、音符だけでリスナーに自分の気持ちを伝えなければなりません。果たしてそれが出来るのか?ポップスがやっていることを、クラシカルな手法でやる。それが私の目的です。この国のクラシック音楽の重い扉を、より多くの人に聴いてもらうために少しでも開けられないか。私が音楽を制作しているのは、そんな素人のささやかな挑戦なのです。素人には素人にしか見えないことがあるだろうと思います。そこからクラシック音楽を俯瞰してみると、きっと違った景色がみえると思うんです。当たり前だったこともそうでないように思える。そんなこともあるでしょう。

「Lullaby」は子供のいない私が皆さんに届けたい「子守歌」なのです。「クラシック音楽はちょっと難しくて」という方にでも聴いて頂ける優しい音楽を作りたい。そういう優しい音楽を聴いて、ちょっとでも「クラシック音楽は自分に合うかも」と思った方がいれば、そのを開けて欲しい。私はそんなきっかけになるような音楽を創りたい。そう思っています。私の想いは果たして皆さんに伝わるのでしょうか?Lullabyをお聴きになった皆さん。どう思われましたか?                             


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