黄金のレガシーのシナリオ評価は何故イマイチなのか
※この記事にはファイナルファンタジーXIV・黄金のレガシーの多大なるネタバレが含まれております
はじめに
タイトルからいきなりネガティヴな感じだけど、個人的には今作そんなに評価低くないです。
SNSとかまとめサイト見ると黄金のレガシーのシナリオは賛否両論で、コレまでと比べてネガティブな意見が若干目立つので、何がいかんかったんだろう?と思い、感じた事を雑然と並べてみる。
比べちゃ可哀想
まずね、擁護ってわけじゃないんだけど、「漆黒や暁月と比較して黄金はショボい」ってのはね、流石に比べちゃ可哀想だと思うの。
水晶公やエメトセルク並の怪物キャラはそうそう生み出せるもんじゃないし、暁月はそれまでに貼った伏線の回収だからこそ成り立ってたシナリオなので。
新章開幕ということでどうしても今作のハードルは高いわけで、コレから新しい展開が…って思ったけど、なんか綺麗に終わっちゃったな?
いくつか伏線は残してあるけど、エメトセルクの宿題はたった一章でほぼ回収しちゃったわけだけど…残弾数大丈夫か?そこだけは心配になった。
シナリオ展開が冗長?
カットシーンが多い!長い!という意見をよく見かけるけど、本質的な問題は「冗長さ」を感じさせる脚本にあると感じた。
だって暁月だってカットシーンの数アホみたいに多かったけど長さとかだるさは感じなかったもんね?(個人差あり)
今作はウクラマトとその仲間達が「相手を知る」「互いに寄り添う」「自らも成長する」という工程を、最初から最後までひたすら繰り返す物語と言える。
ウクラマトの真っすぐさ、そして王としての成長を描くために必要な工程だったのかもしれないけど、同じ作業の繰り返しになってしまった感は確かに否めない。
グルージャジャの言葉「無知ゆえに争い、知りて絆を結ぶ」というのが今作のテーマの一つなんだろうけど、ちょっと擦りすぎかも。
(ついでに言うと「聞いて、感じて、考えて」もこれまでに引き続き擦られまくるので食傷気味)
前半パートまではそんなに気にならなかったが、世界観や話の流れが大きく変わる後半パートにおいてもこのスタンスが続くので、冗長さが際立つ格好になってしまったのかなぁとも思う。
属性盛りすぎ問題?
エオルゼアでは「新大陸」と呼ばれるだけあって、トラル大陸のモチーフは開拓時代の北米大陸や南米の一部だと思われる。事前に多民族国家だというのも知らされていたし、色んな文化が混ざっててんこ盛りになっている事自体はコンセプトとして問題ないように思える。
個人的にはツアーしてる感じで楽しめたけど、前半パートでメキシコ~南米ツアーを楽しんでいたかと思いきや後半パートで急に西部劇が始まり、その直後にSF近未来編が始まるのは良くも悪くも盛りすぎである。
加えて後半パートからはFF9要素が唐突に挿入されはじめるが、過去作プレイ済みの人ほどむしろ違和感を覚える構造になっており(後述)これも盛りすぎ感の要因になっていると思われる。
なお、属性の多彩さは先述の「冗長さ」とは相反するように思えるが、「属性は変わっても本質的にやってる事は同じ」という構図がむしろ冗長さに拍車をかけているのではなかろうか。
誰が主人公なのさ問題
今作のヒカセンは主人公というより後方腕組み彼氏面している保護者枠で、この物語の事実上の主人公はウクラマトではないかと考えられる。
これまで主要キャラにはあまり居なかった熱血主人公タイプなので好感は持てるものの、行動原理が単純で決して深みのあるキャラではないので、感情移入しやすいキャラとは言い難い。
継承の儀序盤のメスネコちゃんモードの時はさらわれたり、くよくよしたり、ヒロイン枠じゃねコイツ?とまで思ったけど、旅を経てわずか数クエストの間に急激な成長を遂げ(これはFF14あるあるなのである程度のご都合主義は許容範囲としよう)、王としての風格が出てくると、先述した通り「相手を知る」一辺倒になってしまうので、終盤に至るにつれて段々魅力が薄れていく印象を受けた。
一方で、もう一人の主人公とも言えるエレンヴィルについては精神的成長の描き方が自然だったり、暁月〜黄金序盤まではあまり表に出さなかった心情が発露する場面があったりと、こちらの感情をグイグイ引っ張られる魅力を感じた。
正直なところウクラマトを食っちゃってる感が否めなかった(流石吉田のお気に入りだぜ)
なお、誰が主人公問題の1番の被害者はクルルさんだと思ってます。
一応伏線の回収は完結したけど、ガラフ関連は紅蓮からずっと引きずってた宿題だったはずだし、クルルも主人公になり得るポジションなので、もうちょっと時間割いてあげてもよかったんじゃない?とは思う。
ゾラージャの動機が不明瞭?
という意見を結構見かけますが、個人的にアレは
「情報が少ない事が何よりの説明になっている」と解釈した。
確かに他の王位継承者の動機や成長についてはくどいほど描写されているのに対し、劇中でゾラージャの動機、父への妄執が示唆されるのは討滅戦の演出とその前後のセリフくらいなので非常に少ない。
深読みしたり考察する人ばかりではないので、これでは動機がわからないという声が出るのも理解できる。
しかしこれこそが、「奇跡の子」という重圧を背負い、誰にも打ち明けられず歪んでしまった彼の生涯を表しているように思える。
死に際に「父上から何も受け継げなかった」と悔やむゾラージャに対し、「青いウロコのフビゴ族は、お前とグルージャだけじゃねえか!」と説くウクラマト、このシーンで「え?そこ???」と感じた人はけっこう居たと思うんだけど、これこそがゾラージャを苦しめていた呪いだという事に彼女はこの時点では気付いていない、というエグ過ぎる構図なんですよねコレ。
後の一時帰国で「心を開いてくれないとか言ってないで、こっちから踏み込むべきだったんだ」と後悔を述べているが、ウクラマトが歩み寄った事で双血の教えから解き放たれたバクージャジャと対比するとさらにエグい。
今作のメインテーマ「相手を知る」事の重要さがよく表れており、登場時間が多い割に「薄い」印象のあったウクラマトに対し、ゾラージャはセリフや描写が少ないにも関わらず黄金のレガシーのシナリオに深みを与える貴重な存在だったと言える。
結局いつものパターンになっちゃう
前半パートは「新生」と髣髴とさせる新たな冒険という雰囲気があったが、後半から終盤にかけての展開が「いつものパターン」にはまってしまっている感じが否めない。
世界の危機とあらば暁の出番だぜ!って結局いつもの絵面になってるし(安心感はあるけどね)
前述した「相手を知る」というテーマと合わせて、「討つべき敵からも想いを継ぐ」というのは漆黒から続く流れでもある。
また、ゲーム内コンテンツ的な視点だと、今作も最終エリアやIDがアーモロート、レムナントと同じく「ラスボスの過去を追体験するタイプ」になっていて「相手の想いを知る」という演出の一部になっている。(メインパッチ以外だと6.5の月の地下溪谷なんかも同じパターン)
「やっぱりいつものノリの方が安心するわ」って気持ちと「もうこのパターン飽きたよ。何が新章開幕だよ」という気持ち。心が二つある〜〜〜!やはり漆黒、もっと言うと「宿題」の件と併せて、脚本や演出においては色々な意味でエメトセルクに引っ張られているなぁという印象。
やっぱすげーよ、あの男は。
FF9要素の使い方
FFシリーズからの出典はこれまでにも多数あり、FF14の世界観に合わせた大幅なアレンジも珍しくないため、賛否両論なのは今に始まった話ではないが・・・今作は原作の要素をあえて「反転」させたとも取れる大胆な改変が成されていた。
具体的には以下の通り(FF9知らんって人は読み飛ばしてもいいかも)
●原作はFF6~8までの近代化路線の後に、ハイファンタジーの世界に原点回帰するのがコンセプトだったが、今作ではその真逆で、エオルゼアとは比べ物にならないほど技術が発展した世界として描かれる。
●アレクサンドリアの姫(女王)ガーネットがモチーフと思われるスフェーンの性格や目的も正反対であり、やっている事はむしろFF9の黒幕的存在である「テラ」のそれに近い(魂の循環制御、異世界との融合、生命力の簒奪、など。厳密には、永久人やエバーキープという仕組みを生み出したプリザベーションこそがテラ人、スフェーンはジェノムに相当するのかな)
●逆に、育ての親を失ったり、即位した直後に超技術を持つ国に侵攻されて大損害を被る役が、原作ではガーネットだったが、今作ではウクラマトになっている。これも恐らく構図の反転と思われる。また、困っている人を放っておけない性格や主人公としてのポジションはジタンの性質の一部も持っているように思える。
●生きている事の意味を求め続けたビビの遺言「空の上に記憶を預ける」が、エバーキープでは死者の生きた証が人々の記憶から消える現象を指す言葉になっているのは流石に皮肉が過ぎる。
上記の理由から、人によっては悪趣味と感じるかも。
また、構図の反転が意図的なものだとしても、基本的な扱いが「雑」と感じてしまったのは筆者だけじゃ無いはず。特にBGM関連の引用。
とりあえず原曲BGMを挿入すればいいか〜って感じで頻繁にプリマビスタ楽団の曲が流れるんだけど、コレが事あるごとに雰囲気を破壊してた気がする。
オブリビオンのアジトでタンタラスのテーマのアレンジ版が流れるなど、原作と設定や雰囲気がマッチしてたケースもあっただけに残念。
個人的に最も引っかかったのが、原作ではアレクサンドリア防衛戦で流れていた「守るべきもの」がリビングメモリーのミララ族同士の決闘の出し物で使われていたシーン。
いや、そこじゃねえだろ
むしろオーティス戦で使えよ!
オーティスは間違いなくスタイナーがモデルのキャラでしょ、ソリューションナイン防衛戦というおあつらえ向きのシチュエーションでどうしてあの曲を使わないの?!
などなど…出典引用するならもうちょっとこだわって欲しかった部分…
さいごに
と、このように、確かに思い返してみるとツッコミどころだったり残念な箇所はポロポロと出てくる。
それでも、「史上最高傑作」とは言えないまでも、やはりFF14のシナリオはいつだってワクワクさせてくれるもんです。
私は世界観・設定厨なので民族関連の逸話が作り込まれていた今作はけっこう好きです(多くの人にとっては先述の属性盛りすぎ問題として認識されている可能性アリ…)
7.01にて、アルカディア周りで魂資源関連の掘り下げもあったので、7.1以降の展開に期待しませう。
なお、記事画像は特に今回の考察とは関係無い急にグラハとのデートイベントが始まって興奮して撮ったSSです。