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「新規事業研修の選び方:経験ゼロの講師では足りない理由」

イントロダクション

「この研修、本当に役立つのかな?」
あなたは最近、新規事業に関する研修を受けました。

講師は非常に理論的で、スライドには多くの概念が詰まっていましたが、結果、学んだ内容が抽象的すぎて、現場での実践に結びつけるのが難しいと感じていたのです。

みなさんこんにちは、MOONSHOT WORKS株式会社の藤塚洋介です。

元プロバイクレーサーから新規事業開発のスペシャリストへと転身した経験から、今日は「研修・コーチ」の「あるある」な課題と、選ぶ基準についてお話しします。

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冒頭の話、これはプロスポーツの世界でも同じことが言えるんです。

例えば、理論的な知識だけを持っているコーチがいたとしても、彼らが選手としての実践経験がなければ、選手に具体的なアドバイスを与えるのは難しい。

実際、成功しているチームの多くは、理論と実践をバランスよく融合させたコーチの指導によって支えられています。

ある日、クライアント企業の橋本さん(仮称)から相談がありました。

「高額な新規事業研修を受けて面白かったので、実際の悩みを質問したんです。」

「ですが、講師の回答が本に載っているような一般的な内容で…」
「サービス開発には、顧客のニーズを深く理解することが重要」

といった何にでも当てはまりそうなアドバイスばかりだそうです。

「よく聞けば、その講師は、調査は得意だけど実証実験も、サービスを創った経験もゼロだったんです!」

具体的にどのように、どこまでニーズを掘り下げるべきか?
どんなシーンでどのテクニックを使うといいのか?
どんな課題に直面する可能性があるか?
自分たちはどんなスキルを学べばいいのか?

橋本さんは実務に直結する「知りたいこと」の情報が得られず、
「時間がもったいないから、次回の研修は欠席しよう」
とフラストレーションが募っていたのです。

実話を元にしたフィクションです。

理論は「学ぶ」のが目的ではなく、「使って」事業開発に役立てないと意味がありませんよね。

それでは一緒になぜこのような問題が起きるのか?プロスポーツに学びながら対策について考えましょう。


なぜこのような問題が起こるのか?

統計で見る新規事業開発の現状

かつて、新規事業の成功確率はセンミツ(1,000個で3つ成功)と言われました。
最近では日本の大企業における新規事業開発の成功率は約30%というデータもあります。ずいぶん上がっていますが、それでも大半失敗するのです。

最近の分析で、新規事業開発担当者が感じている組織マネジメント上の課題としては、「人材の確保」や、「知識・ノウハウ不足」がトップでともに4割近い数字となっているそうです。

出典:パーソル総合研究所 2022年
https://rc.persol-group.co.jp/news/202205231000.html

「人材の確保」や、「知識・ノウハウ不足」が、外部の知見者・経験者に頼らざるを得ない状況を生み出していそうですね。

そこで、「コーチ、研修講師、コンサルタントの選び方がわからない」
という問題が潜んでいるのです。

この問題の原因

様々なフレームワークを自由に使いこなす

1.専門家の分断

新規事業はゼロイチから販売拡大まで幾つもの連続したフェーズで繋がっています。
しかし、研修講師など、専門家の経験は「限定されたフェーズ」どれかであることが多いのです。

例えば、「戦略の専門家」「ゼロイチの専門家」「開発の専門家」「マーケティングの専門家」などです。

しかし、前後のフェーズを理解して進めないと以下のようなことが簡単におきるのです。

・開発のことを深く考えず戦略を作ったので、商品を作るのに壮大なコストと時間がかかって断念した。
・ユーザー評価が良かったので素早く販売にこぎつけたが、実証実験を甘くクリアさせたせいで、いざ値段がつくと全然売れなかった。
・トレンドを読み違えリリースした時には競合だらけだった。

多くが「後のフェーズになって気づく」ので失敗してから「あの時ああしておけばよかった」と後悔するのですが「時すでに遅し」となるケースがほとんどです。

2.理論と実践のギャップ

3C,PEST,ビジネスモデルキャンバスなど、フレームワークは魅力的ですが、その通り通用しないことが多々あります。

時には複数ある選択肢から、どれを使うべきかわからなくなることもあるでしょう。
そのように、利用シーンにあったフレームワークを選べることは、重要なスキルなのです。
ですが、研修では個別のフレームワークの使い方に特化しているのがほとんどですよね。

例えば、ある食品メーカーの新規事業担当Cさんは、健康食品市場への参入を計画していました。コンサルティング会社から提案されたのは、ポーターの5フォース分析やSWOT分析でした。

しかし、これらの分析を行っても、実際の商品開発や販路開拓にどう活かせばいいのか分からず、「分析はできたけど、打ち手は?」と途方に暮れてしまったのです。

実例をもとに記載


プロスポーツの指導者

2004年鈴鹿サーキット全日本選手権の決勝2LAP目。時速230kmからノンブレーキで進入する1コーナー。混戦の中のポジション争いでは誰もが自分の理想ラインを通れない。(ゼッケン68が筆者)

私はバイクレーサー時代、貴重な縁があって、監督として多くの実績のある人に、さらには世界選手権で一流選手のメカニックを経験していた人にアドバイスを受けていました。

意外にも、優れた指導者に共通していたのは、物凄い経験者なのに、誰でも手に入るマニュアルを使うことでした。

そして、基本の「型」を守りつつ、自分の「使いこなし方」を持っていることだったのです。

そして、現場におらず電話で相談していても、まるでその人がライダーとして今走ってきたかのような、臨場感のある具体的な指導が可能だったのです。

アドバイスを聞くと、現役選手である私より、この人の方が速く走れるのではないか?と思ってしまうほどです。

レースを引退し新規事業に没頭してから、教える側に求められるのは、同じ構造だと気づいたのです。

理論と実践の融合

サーキットでは、がむしゃらに走ってもタイムが縮まりません。

一つのコーナのスピードを上げすぎてその後の加速が遅れれば、スピードが落ちて全体のタイムが落ちてしまった、という経験はレーサーにとって「あるある」です。

どうやったら1周をいかに速く走るか全体を考えて走る必要があるのです。

そして、ゴールでは時に0.001秒の差が勝敗を分けます。
「0.001秒だけでもライバルより先にゴールしたい。」
そのために、走り方だけでなく、マシンの調整も専門家のアドバイスを受けていました。

エンジンの調整だけでなく、サーキットごとのライン取りや、ブレーキをかける位置、アクセルの開け方、エンジン、サスペンションのセッティングなど、アドバイスの範囲は数えたらキリがありません。

新規事業に当てはめると、業界やあなたの会社の制限、個別事情、トレンド技術や競合との差別化。
業界シェアは1位とそれ以外では大違いです。

マニュアルを基本にしつつ、講師やコーチに求めるのは、さまざまな環境の変数に合わせ指導してくれることがポイントなのです。

これには経験則が欠かせません、踏んできた”場数”が重要なのです。

個人の「強み」「弱み」を把握した指導

レーサーは普段から体を鍛え、何度も同じコースを走って、イメージ通り走れるように練習し”ベースの速さ”=「持ちタイム」を上げていきます。

新規事業に当てはめると、これはインタビューやプレゼン、仮説構築のスキルを上げることに通じるでしょう。

ですが、人によって「強み」や「弱み」は様々。
だれでも同じスキルを学べばいいわけではありません。

そして、自分では自分の「弱み」「強み」は中々気づきません。

監督は、ある時コースサイドから私の走りを観察し、

「あのコーナーは藤塚さんだけ誰よりも速い!」
「でも、まだムラがある。もっと活かした方がいい」

とあるコーナーでの気づきを教えてくれました。

このコーナーはわずかな時間で通過するので、走っている本人は他者との違いがわかりにくいのですが、緩やかなのぼりの直線速度に繋げるために重要でした。

自分の強みを伸ばすことをしていなかった私は、嬉しくなり常に意識して走ることで、他の人と違う走り方をしているラインとテクニックに気づきました。

そうして、そのテクニックを意識して使い出し、いつでも速く走れるようになりました。
そこで、私は別のサーキットでも、似たコーナーがないか、抽象化して考えました。

そうすると
「マシンを寝かし込んでいる時間が長いコーナー」
「120~140kmのコーナリングスピード」
「縁石を通るラインがある」

というのが条件とわかりました。
そこで、複数のサーキットで似たコーナーを見つけ、この走りを再現していきました。

それからは「このタイプのコーナーでは負けない」と違うサーキットでも得意な走り方を使ってタイムを上げていったのです。

実践して調整し、身についていく

それでも路面の荒れや、風、気温など日々変わるので、毎回同じセッティングは通用しません。

セッティングの「仮説」をコーチと作り、「走って検証」しコーチにフィードバックする。

何度も検証・調整しタイムを削っていく様子は新規事業における仮説検証そのものです。

当初は、監督やメカニックがいないと、それまでに学んだことと結びつかずに、同じようなセッティングの失敗をしていました。
すると、「前に教えたことを活かしていない。」と叱られたものです。

そうやって、調整のコツが少しずつ自分でも身につきます。

試合本番はさらに理論通りいかない

実際のレース本番では、40台以上のマシンが一度にスタートし少しでも前に行こうとポジションを争います。

ライバルたちは、イン側に「タイヤ一本分の隙間」があればマシンをねじ込んでくるので、時には3台も並んでコーナーを走る場合もありました。
そのような状況では通るラインは理想からはかけ離れています。

「実践では理論通り通り走れない」のが普通なのです。
レース中にアドバイスを受けられるわけがありませんので、選手が自分で、瞬間の判断をしていくしかありません。

新規事業も、突如ライバルが現れ、わずかな弱みを攻めてくるかもしれないし、大事な場面で急にプレゼンのチャンスが来るかもしれません。

どれだけ研修講師や、コーチ、コンサルタントに支援を受けても、最後は必ず”自分で判断し自走できる力”をつけておくのが必須なのです。

新規事業開発における「理論と実践の融合」の例

仮説検証の質を上げていくために、理論と実践をバランスよくすることが重要
  • 理論:ペルソナ分析、カスタマージャーニーマップ

  • 実践:実際の顧客との対話、顧客の観察、フレームワークの修正

ある教育系ベンチャー企業で、オンライン学習サービスの開発にあたり、研修で学んだカスタマージャーニーを作った後、実際に20人以上の学生や社会人にインタビューを実施していました。

リーダーの中山さんは、カスタマージャーニーにいくつか空白があったのが気になり、当たり障りのない文言で埋め完成しました。

逆に、研修で与えられたテンプレートでは書ききれない項目が多くあったので、枠の数だけ埋めました。
書けない分は、インタビューで得た意見をまとめて抽象化して記載したのです。

「これでいいか。」
と思っていたところ、廊下で研修講師の鶴巻さんにばったり会いました。

なんと、聞けば鶴巻さんは、研修後コンサルタントとして契約したようです。

「鶴さん!ちょうどよかった、聞きたいことがあったんです。」

最近の活動を共有したところ、
「じゃあ、テンプレートを変えていきましょう。」
とあっさり意外な回答。

それからは都度相談しながらテンプレートをどんどん変えていきました。

時には「ここを変えすぎると効果が落ちる」と変化させてはいけない項目を教えてくれました。

また逆に「この項目は何行でも増やしていいのです」と自由度も。

コンサルの鶴巻さんは経験からか確信しているように、王道のテンプレートをどんどん改造していきます。

まず、商品点数が多いことに対応するため、入力できる枠を増やし、中山さんがまとめてしまった項目は実際の顧客の具体的な言葉に戻されました。
そしてカスタマージャーニーでは一方通行するだけでなく視覚的に戻ったり回ったりを表現しました。

これが実際の顧客のジャーニーに近くなりメンバーの「腹落ち度」が上がったのです。

その結果、「隙間時間の活用」というニーズを発見し、スマートフォンに特化した5分間学習コンテンツを開発。
これがヒット商品となりました。

中山さんはだんだん、「フレームワークに使われる側」から「使いこなす側」に変わっていく自分を感じ、もっと他のフレームワークも学びたくなっていきました。

実在の団体・人物とは関係ありません。

結局どのタイプを選ぶのか

ここまで読んで、結局どのタイプを選ぶのかイメージはできましたか?

「天才指導型」有名な「元〇〇」成功法則に自分が合わせる必要がある。
「個別指導型」知名度はないが経験者で一人一人に合った指導をする。
「理論優先型」理論や知識は素晴らしいが実践のギャップは埋められない。

もちろん3つ揃ってるのが最高ですが、見つからないかもしれません。

そしてもう一つ重要な軸があります。
文中にヒントが隠されていましたが、気づきましたか?

指導者ができればできるほど、頼ってしまい
「次何したらいいですか?」
「これであっていますか?」
と指導者がいないと何もできなくなってしまう方がいらっしゃいます。

そう、代わりにやってくれる「業務代行型」の反対側に位置する、”自走できるための指導を受けれらるか”を意識した「自走支援型」かどうかが重要なポイントなのです。

まとめ

いかがでしたか?

新規事業開発を成功させるのは、プロスポーツのように困難な挑戦と言えるでしょう。
しかし、適切なアプローチと支援があれば、必ず成功への道は開けます。

ぜひ、あなたの選択やあなたのアイデアをコメント欄で共有してください。一緒に、未来を創る旅に出かけましょう。


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