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安心成長から飛躍のステージへ!アンゾフのマトリクスで未来を切り開くには?【フレームワーク#04】
はじめに
ビジネス環境が急速に変化する現代において、企業が成長し続けるためには、適切な戦略を立て、それを実行することが欠かせません。
新規事業開発の世界に足を踏み入れて10年と少し。
私、藤塚洋介が 70以上のプロジェクトに携わってMOONSHOT WORKS を立ち上げてきた今日までに最もよく使われるフレームワークがあります。
その一つが、「アンゾフの成長マトリクス」です。
このガイドでは、アンゾフの成長マトリクスの基礎から最新の応用例まで、特にデジタル時代やグローバル市場への対応を中心に解説します。
「基本はよく知っている」という方は目次の実践編から読んでみてくださいね。
この記事が、あなたの会社の成長戦略を強化するためのヒントとなれば幸いです。
<基本編>アンゾフの成長マトリクスの基礎
アンゾフの成長マトリクスとは?
アンゾフの成長マトリクスは、企業が成長するための戦略を考える際に活用されるフレームワークです。
市場と製品の2つの軸に基づいて、企業は4つの成長戦略(市場浸透戦略、市場開拓戦略、製品開発戦略、多角化戦略)を選択します。これにより、現状に応じた最適な成長アプローチを選ぶことができます。
歴史と背景
アンゾフの成長マトリクスは1957年に経営学者イゴール・アンゾフによって提唱されました。彼は、企業が既存の市場や製品に固執せず、成長機会を広げるための新しい視点を提供しました。
みなさん驚きませんか?67年前のフレームワークなのにまだ使い続けられているなんて、本当に素晴らしいことですね。
アンゾフの成長戦略の4つのオプション:最新の企業事例と具体例
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1. 市場浸透戦略
既存の製品を既存の市場でさらに深く浸透させる戦略です。競争の激化に伴い、デジタルマーケティングが重要な役割を果たしています。
最新事例:スターバックスのデジタル活用
スターバックスは、デジタルロイヤリティプログラムやモバイルアプリを駆使し、既存顧客の来店頻度を増加させました。
SNS広告と連携したキャンペーンやプロモーションが、新規顧客の獲得にもつながっています。
デジタル施策の具体例
SNS広告: InstagramやFacebookを活用したターゲット広告
SEO対策: 自社サイトの最適化を行い、検索エンジンからのアクセスを増やす
オンライン販売の強化: Eコマースやサブスクリプションサービスによる販売拡大
2. 市場開拓戦略
既存の製品を新たな市場に投入する戦略です。グローバル市場への進出や新たな地域・顧客層の開拓が鍵となります。
最新事例:Netflixのグローバル展開
Netflixは、コンテンツをグローバルに展開し、既存のコンテンツを新たな市場に投入しました。各地域の文化や言語に対応したローカライズ戦略を取り入れ、世界中の顧客を獲得しています。
市場開拓の施策
クロスボーダーEC: 越境ECを活用し、新興市場にアクセス
ローカライズ戦略: 製品やサービスを現地のニーズや文化に合わせる(例: Netflixの地域ごとのオリジナルコンテンツ制作)
3. 製品開発戦略
既存の市場に向けて新たな製品を開発・投入する戦略です。特に技術革新を通じた製品開発が成長のカギを握っています。
最新事例:Teslaのエコシステム
Teslaは、既存の電気自動車市場に新製品(電池ストレージ、ソーラーパネル、充電インフラ)を開発・提供し、製品のライフサイクル全体を包括するエコシステムを構築しました。
オープンイノベーション
オープンイノベーションを通じて、外部の技術やアイデアを活用することが一般的です。AppleやAmazonは、外部の企業やスタートアップとの提携を積極的に進め、新製品開発を加速させています。
4. 多角化戦略
新しい製品を新しい市場に投入するリスクの高い戦略ですが、成功すれば大きな成長が期待できます。
最新事例:Amazonの多角化戦略
Amazonは、ECからスタートし、クラウドサービス(AWS)、電子書籍(Kindle)、そしてエンターテインメント(Prime Video)へと事業を多角化しています。Amazonの多角化は、既存のプラットフォームを活用しながら、新たな市場と製品にリソースを拡大していった典型的な成功例です。
垂直統合と水平統合
垂直統合: サプライチェーンの上流・下流を統合し、効率性と利益率を向上(例: トヨタの部品サプライチェーン統合)
水平統合: 関連する異業種に進出し、リソースとシナジーを最大化(例: GoogleがNest Labsを買収し、スマートホーム市場へ進出)
アンゾフの成長マトリクスにおける多角化戦略の4つの方向性
アンゾフの成長マトリクスの中で、最もリスクが高いとされる「多角化戦略」は採用しない、これも戦略としては定石と言えるかもしれません。
しかし、さらに次の4つの戦略に分類することで可能性を広げています。
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水平型多角化
垂直型多角化
集中型多角化
集成型多角化
それぞれの戦略を異なる業界の事例で見ていきましょう。
水平型多角化
「水平型多角化」とは、企業が既存の技術や資産を活用し、既存の顧客に近い新しい市場に製品を展開する戦略です。
例えば、住宅メーカーがアウトドア用の組み立て式キャビンを開発し販売するケースが挙げられます。既存の建築技術や設計ノウハウを活かせるため、比較的リスクが低く、既存の顧客層に近い新市場に容易に進出できるのが特徴です。
垂直型多角化
「垂直型多角化」は、既存の市場において、サプライチェーンや流通に新たな役割を加える戦略です。
例えば、スポーツウェアメーカーが自社工場を設立し、素材の製造から最終製品までを一貫して手掛けるケースです。これにより、品質の管理やコスト削減を目指せますが、新たな設備投資や製造ノウハウの獲得が必要となり、リスクが高まる可能性があります。
集中型多角化
「集中型多角化」は、既存の技術やノウハウを活用して、異なるが関連性のある新市場に進出する戦略です。
例えば、ドローン製造メーカーが、農業用ドローンを開発し農薬散布や監視に特化したサービスを提供するケースです。既存の技術を活かしつつも、新しい分野での事業展開は新たなリスクと挑戦を伴います。
集成型多角化
「集成型多角化」とは、既存の事業と全く異なる業界に進出する戦略です。
例えば、家電メーカーが飲食業に進出し、レストランチェーンを展開するようなケースです。
既存のビジネスとの関連性がないため、シナジー効果は期待しにくいですが、リスク分散の意味では有効な手段となる場合があります。
<実践編>アンゾフの成長マトリクスを使った意思決定
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アンゾフの成長マトリクスに基づく段階的な成長戦略
アンゾフの成長マトリクスにおける多角化戦略は、多くの企業にとって魅力的に映ります。
新市場への進出や新しい製品の開発は、新規事業としての刺激があり、企業にとっても挑戦的で面白いものです。
しかし、同時にリスクが非常に高いことも事実です。
では、どのようにしてリスクをコントロールしつつ、成長を実現するのでしょうか?
4象限「多角化」の魅力とリスク
第4象限の「多角化」は、既存事業と異なる新しい市場や新製品に進出するため、非常に高いリスクを伴います。
例えば、ある家電メーカーがフィンテック事業に参入するといったような、既存事業と全く異なる分野に踏み込むことは、新たなノウハウが必要であり、初期投資も大きくなります。
このようなリスクは、特に大企業にとっては慎重に検討すべきものです。
2・3象限の戦略が面白くない?
一方で、企業の多くは、2象限「市場開拓」や3象限「製品開発」の戦略に対して「新規事業ではない」と感じることもあります。
例えば、既存の製品を使って新しい地域に展開する市場開拓や、既存市場に向けた新製品の開発は、ある意味で「安全」な戦略です。
しかし、「それでは面白くない」「革新的ではない」と感じてしまうのは社内起業家の皆さんも経営者も同じなのです。
「それは既存の事業部に任せればいい」と思った方も、一度この先を読んでみてください。
段階的な成長戦略を進める重要性
このような悩みを抱える企業に対して、我々は、2象限・3象限からスタートし、徐々に第4象限へと進んでいく段階的な成長戦略をお勧めしています。
まずはリスクの低い2象限・3象限領域から挑戦し、そこで得た知見やノウハウを基に、まるで2段階右折でもするように、2回目に多角化へと進むことで、リスクをコントロールしつつ成長を実現できます。
そう、2回目にずらすときには多角化の領域は第2象限or3象限になっている、それだけのシンプルな戦略です。
これを成功させるポイントは、「あらかじめ、小さく始め、多角化に大きく育てるシナリオを複数プラン作っておくことです。
行き当たりばったりでこの戦略をとると、社内の承認を取るのが難しいでしょう。
事例: 製薬企業の段階的成長
ある製薬企業が自社の医薬品を使用し、新たに化粧品市場に進出した事例があります。この企業は最初に、2象限である「市場開拓」に注力し、既存の医薬品技術を使って皮膚治療に特化した製品を美容市場で展開しました。
その後、消費者からのフィードバックを活かして、徐々に4象限「多角化」に移行し、美容関連のサプリメントやスキンケア製品を開発するという戦略を取りました。
最初の起案の際に、すでに成長シナリオを持った提案では、経営陣が求める「手堅さ」と「将来性」の両方を持ったプランになっていることが重要です。
アンゾフのフレームワークの拡張・応用
私が代表を務めるMOONSHOT WORKSではアンゾフのマトリクスを9象限や16象限に拡張したフレームワークを活用して、具体的な戦略シナリオを描けるよう支援しています。
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これにより、企業はリスクを抑えつつも段階的に成長しつつ、最終的に多角化のリスクを低減しながら、飛び地の新規事業の成功を目指すことが可能なのです。
事例: IT企業の9象限フレームワーク活用
あるIT企業は、9象限フレームワークを使用してまずは既存のソフトウェア製品のオプションを同じ市場に展開しました。
その後、そこで得た知見をもとに、派生市場に展開していき、最終的に新市場に新しい商品を投入するシナリオAと、市場はそのままに機能を拡張した高額商品を展開していくシナリオBの2つの計画を進めたことで、社内の合意形成を得ることができたのです。
このプロセスではリスクを段階的に管理でき、かつ事業を多角化されることから経営陣も承認しやすく協力を得ることができました。
結論と今後の展望
アンゾフの成長マトリクスは、企業が持続的な成長を達成するための基本的なフレームワークです。
ただし、現代のビジネス環境では、デジタル化やグローバル化に対応した柔軟な戦略が求められます。
定量データに基づく分析と他のフレームワークとの組み合わせ、さらには最新のテクノロジーやイノベーションを取り入れることで、より実効性のある成長戦略を策定しましょう。
それではまた次の記事でお会いしましょう。
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