代替品の見つけ方
ファイブ・フォース・アナリシス!
マーケティング分析の中で有数の格好良さを誇る名前です。
フォースという言葉が銀河の英雄を想起させるのでしょう。
実態は自社製品を取り囲む五つの競争要因を分析する為のフレームワークです。
業界内の競争状況、自社に対する売り手と買い手の交渉力の変化、新規参入による新たな競争の発生、そして代替品による競争環境の変化、これら五つを見ることで競合を鮮明に捉えます。
五つの中での順位付けに意味はありません。製品や環境によって影響力の大きいものは異なってくるからです。
どれが重要ということはありませんが、商品企画者として見落としがちであり見落としてはいけないのが代替品の脅威です。
代替品が存在すれば、状況次第で自社製品の存在価値が消滅するかもしれないからです。
家電製品においては代替品の脅威が大きな影響力を発揮します。
ブームの終焉には常に代替品が存在しました。
例えば数秒で蒸気がで始めるスチーマーはレンジで蒸し調理ができるシリコン容器によって駆逐されました。
油を使わずに唐揚げができるノンフライヤーは類似の機能を持ったオーブントースターに駆逐されました。
安く美味しくパンが作れるホームベーカリーは少し高級なコンビニ食パンとプライベートブランドの格安食パンによってブームの終焉を迎えました。
代替品への意識が弱いと成長期から急激な衰退期に向かうリスクが伴います。
ではこの代替品、どのように見つければ良いのでしょうか。
考えてみましょう。
音楽CDの代替品は何でしょう。
デバイスとしてはLP、カセットテープ、ミニディスクなどが存在しました。
機能が類似していてスペックの異なるものは狭義の代替品です。
歴史の中でミニディスクはそこまでの力を発揮できませんでしたが、テープはCDに置き換わっていきました。
狭義の代替品は市場の定義の仕方によっては競合に入ってしまいます。
では、広義の代替品とはどんなものでしょう。
音楽CDにおいてはみなさんご存知のストリーミング再生やダウンロードです。
カセットテープやミニディスクのような実体を持たない情報ですが、音楽を聴くという目的を果たしています。
市場での競争とは顧客の欲求を満たすための競争です。
最初に一定水準まで満たすと二番手の入る余地がなくなります。
顧客が欲求を満たす為に支払える対価は有限ですので、同じ目的達成の為に存在するものは全て競合であり、達成手段が異なるものが代替品として影響してくるのです。
代替品を考える時には機能や形状ではなく、提供価値と定義を考えなければなりません。
提供価値が同じであれば手段が異なっても顧客は対価を支払ってしまうからです。
音楽CDの購入とストリーミングへの月額課金がその関係にあります。
また、提供価値の定義を誤ると見落としや代替品の過小評価に繋がります。
手軽に蒸し料理が作れるという電気のスチーマーに対して、「蒸す」の定義付けを誤れば「レンジでの加熱は蒸しているとは言えない」と玄人ぶった主張をしながら駆逐されてしまうかもしれません。
「蒸す」を「水溶性ビタミンの流出を最小限に抑えた加熱調理方法」と設定すれば蒸気加熱の代替手段にマイクロ波加熱が入ってきます。
代替品は商品企画に対して常に脅威を与えてきます。
見落とせば致命傷になるのに、同じ売り場に存在しない為に見落としやすい性質があります。
脅威ではありますが逆に利用すれば強力な武器にもなります。
自分たちが何かの代替品になるのです。
恐れていた脅威を競合にぶつけるのですから、こんなに頼もしいものはありません。
脅威にもなれば強みにもなる、それが代替品の力です。
商品の提供価値を明確にし、その言葉の定義を決めることが代替品を理解する最初の一歩です。
May the Five forces be with you!
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