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数字にする努力

商品企画は顧客の価値を考える仕事です。
その商品がもたらすメリットは何なのかを考えて方針を決めます。
静かな掃除機、甘すぎないチーズケーキ、軽く走れる電動自転車、長く充電できるバッテリー…
安易に考えるとこのように形容詞が乗った商品案が出てきます。

静かとは?
甘すぎないとは?
軽くとは?
長くとは?

形容詞は主観を表明する為にあるので、価値訴求のような他者に伝えるのには不向きです。
誰かにとっては静かでも、別の誰かにとっては騒がしいかもしれません。線引きのないまま錦の御旗のように掲げれば不満の声が上がります。

表現を細かくすることで誤解を抑えることができます。
隣の部屋に響かない静かさ、酸味が引き立つ甘さ、つま先で動く軽さ、日没まで使える長さ…
条件を加えると誤解は抑えやすくなりますが、それではものづくりのインプットになりません。

それってどういうこと?
そう聞かれて間違えなく伝えられるのは数字です。
A特性で45dB以下、糖度15度、1ニュートンの操作力、10000mhAの容量…
これらは企画仕様ではなく設計仕様ですが、曖昧さを嫌う設計者と話をする為に有効な表現です。

そんな簡単に数字にできるものではないと考えるかもしれませんが、そう言える人ほど数字化の努力をしていない可能性があります。
実のところ調べても出てこなっただけなのかもしれません。

数字化をするにはそのことについて深く体験していなければなりません。
掃除機の力を測るのにダイソンが本体の真空度ではなく、ダストピックアップ率を用いたのは掃除をしている人の実感に近いからです。
掃除をしていなければ分かりません。
この世の全ては物理法則に基づいているので、無理矢理な置き換えであっても数値化できるはずです。

数字化できない、それは商品についての理解が浅いか、洞察が甘いと反省するべきことなのかもしれません。

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