矛盾を超えるしようひん企画
最強の矛と最強の盾をぶつけ合わせたら勝つのはどちらか。
そんな古事から矛盾という言葉は生まれました。
どちらも砕けるという回答の場合、盾の所有者に傷があるかで判断が分かれます。
盾は持ち主を守るもの。傷がなければ役割を全うしており、矛による傷を許してしまっていれば守りきれなかったことになります。
判断が付かず論理が破綻するから矛盾と表現されます。
武という字は「戈(ほこ)を止める」と書きます。
平和の為にあると思いきや、矛の存在価値を否定することで己の主張を通しているとも言えます。
矛の存在意義を否定することなく争いをおさめることができれば、それは真の平和であると考えられます。
最強の盾でもなく、武力でもなく、矛の存在意義を否定することなく平和を得るものがあります。
それが「鞘」です。
鞘に納めることで周囲は刃の危険から守られる一方、矛自身も刃が傷つき衰えることから守られます。
抜けば再び武器となる為、矛の存在意義を否定するものでもありません。
強いか弱いかを決めるのではなく、「今ここではまだ振るうべきではない」と時間と場所の概念を変えることで争いを納めるのです。
どちらが強いかを競う対立に対して、全く異なる概念から俯瞰することでより高い次元の解を得ることを「止揚」と言います。
矛盾を包み込んでより良い解を得ること、それが止揚です。
商品企画にも矛盾する要求が数多く与えられます。
付加価値は他社より大きく、コストは他社より小さく。
モーターは強いが音は静かに。
素早く加熱をするが省エネに。
こういった矛盾するわがままな要求に対して答える時に意識すべきことが止揚です。
言い回しを変えて他社より優位な印象を与えればコストはかかりません。
聞き取れない周波数なら大きくてもうるさいとは感じにくくなります。
加熱の素早さはヒーターの出力だけとは限りません。
できない時、満たせない時、物作りに携わる人はそれが仕様であると嘯きます。
出来なかった結果の積み重ねを仕様とするか、矛盾を超える為に止揚を目指すか。
商品企画者はどちらを目指すべきでしょうか。