伝わる程よい粒度の抽象性
「パトゥルジャン・イマム・バユルドゥを食べに行こう!」
そう声をかけられたらどう反応を返すでしょう。
きっと一回目は聞き損じたと思って聞き返すことでしょう。
そして二回目を聞き、場合によっては更にもう一回、ゆっくり喋ってもらって知らない言葉なのだと理解するものと思います。
文字列を把握して、それが何かの説明を求めて、詳しいことが理解できてようやく行くかどうかの判断ができます。
呼びかける側はパトゥルジャン・イマム・バユルドゥという名称を挙げるよりも「ナスを使ったスパイシーなトルコ料理」と表現した方が伝わりやすくなりますし、「トルコ料理を食べに行こう、美味しいナス料理があるよ」と誘えばもっと判断は容易です。
何かを伝えるとき、具体的である方が良いと考えるかもしれませんが、実は程よい粒度の抽象性が意思疎通には重要です。
トルコ料理を食べに行く。
トルコでは有名なナス料理を食べに行く。
トルコの揚げナスにスパイス類を詰めた料理を食べに行く。
パトゥルジャン・イマム・バユルドゥを食べに行く。
徐々に具体的になっていきますが、具体的になるほど知識を要求されます。
海外旅行で一緒にパトゥルジャン・イマム・バユルドゥを食べた仲であれば伝わるかもしれませんが、多くの人にとっては初めて聞いて戸惑うことになるでしょう。
これは商品企画においても同様です。
提案する側は調査を重ねて知識を得ている為、基本的な語句の水準が高まっていますが、聞き手はそうとは限りません。
具体的な専門用語を使うよりも相手に伝わる水準まで抽象化した方がよく伝わる場面が多々あります。
説得力のある説明をするには、抽象性の粒度調整をするテクニックが重要なのです。
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