ソーシャルマーケティングと顧客価値
マーケティング理論はどんどん進化します。
効率的な製造販売から、競争を勝ち抜く為の手法に変わり、更なる先進性を求めてどんどん人間心理に踏み込んでいきます。
最新とまでは行きませんが、製品が世の中に行き渡って技術的な差別化が乏しくなってきた段階で意識されるようになったのがソーシャルマーケティングです。
顧客価値を別視点からの情緒性に訴え出たもので、エコに始まりSDGsやDEIといった流行りの言葉もこの流れの中にあります。
こういった社会正義を背景にしたような価値訴求に対して、私はいつまで経っても共感を抱けずにいます。
何か偽善めいたものを感じるといった取り組みに対する不信ではありません。
機能的価値にも情緒的価値にも差がないから社会的価値によって顧客の自己実現または自己超越の欲求を満たすという考え方が商品企画として納得できないのです。
機能的価値の足し算競争はどこかで顧客のニーズを置き去りにしますが、足し算だけが勝ち筋ではありません。
引き算の良さもありますし、丁度良い組み合わせもあります。
廃れた技術が一周回って関心を集めることもあります。
情緒的価値については無限に変化すると言っても過言ではありません。
短期的なトレンドや巡り巡って復活するスタイルもありますので、世の中の変化に合わせれば飽きられるということはないのです。
社会的に正しいことをするのは大企業が一方的な搾取をしているわけではないというエクスキューズとしては必要なことです。
それは経営方針や経営戦略といったレベルの話であって、商品企画の話ではありません。
果たして身の回りに社会的価値を主として成功した製品がどのくらいあるのでしょう。
もしかしてそれは優れた評価を既に得ている、機能的価値や情緒的価値にあと乗りする形で社会的価値を乗せているのではないでしょうか。
サクサク美味しいキットカットがプラスチックの削減を謳うように。
本当に社会的価値が商品の優劣を決める日が来るとしたら、それは誰もが商品企画の可能性を諦めた時だと思うのです。
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