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世界で話題のSHŌGUNを観て、感じたこと。

最近、海外で話題のドラマ「SHŌGUN」を観ました。

おそらく、日本よりも海外の方が熱が凄いんじゃないかな?というくらい、オーストラリアの職場の子にも「SHŌGUN観てる?」と聞かれるくらいの人気ぶり。

結論から言うと、もはやアート作品だった。
日本を表現すると言う点において繊細なアート。かつ、フェミニズムの要素も感じられて、時代の追い風を受けるような作品だと、私は感じました。

だからなおさら、日本よりも海外で人気になっているのが納得。

プロデューサー兼主演には、ラストサムライの頃からそのカッコよさに度肝を抜かれた俳優、真田広之さん。あれから60歳にしてこの大成は本当に凄い。
最近では海外の有名な映画に沢山出られていて、
ドイツ人パートナーも「あ!この人知ってる!」と言うほど海外でも有名人。

ドラマのストーリーは、徳川家康にインスパイアされて作られた主人公の将軍と、実在のイギリス人で家康の家臣だったウィリアム・アダムス(三浦按針)の出会いを中心に、実際の歴史を交えながら進んでいくもので、日本人目線としても外国人目線としても楽しめるのがとても面白かった。


ハリウッドで作ったとは思えないほど ”日本そのもの” が忠実に再現されていて、各シーン細部への拘りがとても繊細。予想以上に”日本らしさ”が詰まっていた。
後で調べると主役の真田広之さんがハリウッド側と「日本人のスタッフとでなければ作らない」と交渉したのだとか。

だからドラマを見た時に、「これは日本人が好きなテイストだな」と思ったし、「これが海外で流行るのは逆に凄いな」とも思った。

日本人にしか作れない繊細さと、ハリウッドにしか作れない壮大な技術の相乗効果でおそらく最高クオリティの時代劇だったと思う。


ただストーリー自体は、戦のシーンや忍者など、
外国人が好きそうな”ザ日本”みたいなシーンはほとんどなかった。なのにこれほどまで世界中で喝采を浴びているのはなぜだろうとも考えた。


このドラマを見た中で、私がまさしくこのドラマがヒットした肝のように感じたことは、
「日本文化の繊細さが忠実に表現されていた」こと、もはや男性キャスト達を凌いでいた「女性キャラクター達の強さ」にあると思っている。

まず一つ目の日本文化の表現について、
この映画での日本らしさの表現は素晴らしかった。
例えば、庭師のシーン。
庭に置かれる岩にも一つ一つ「間」という空間を考えて美しさを表現しているのだよ、というシーン。
一緒に観ている外国人が「おいおいただの岩じゃないのかよ!」と突っ込みを入れる程、日本の美的感覚の繊細さに納得できるシーンだった。

按針が初めて茶屋で遊女に迎えられるシーンも凄かった。
遊女が彼に語るのは、
身体を売るだけが遊女ではない、ということ。知識も教養も、センスも全て磨かれた最高級の遊女が、殿方を悦ばせるために空間すべてを使って愉しませるという日本ならではの美意識。
人間の叡智すべてを尽くしたエロス

これはなかなかに海外にはない概念で、
ただ身体を売るだけではなく、教養や美的センス、エロス、様々な付加価値を付けて男性に最高のエンターテイメントとして楽しませる女という存在は日本ならではでないかと思う。
当時は絶対的男尊女卑の時代であったから、女という限られた身分の中でどれだけ自分の価値を高めて自分を高く売るか、ということにむしろプライドさえ持っているようにみえる遊女でした。
このユニークな日本文化が世界へ発信されて、なんだか誇らしくも思った。
遊女ですら、美しい芸術家に見えてしまうという世界観。実際にそうだったかはわからないけどね。
けれど花魁や今でも残っている舞妓の世界は、儚く厳しくもやはり美しい憧れのようなイメージは今でもある。
そう思うと改めて日本ってなんだか凄い。
アムステルダムのレッドライトライト地区では感じられない文化だし、今の日本にも失われてしまった貴重な文化。面白いなぁと思った。


また温泉に浸かるお風呂のシーンや納豆を食べるシーンもよかった。

まさか納豆が全世界スクリーンデビューする日が来るなんて!
私のドイツ人パートナーはいち早く納豆の存在に気がついて隣でニヤニヤしていた。
ここ最近では意外にも世に知られている”納豆”。これも日本らしくて良いシーンでした。

食事のシーンでは、質素な食事や武士達が使う器まで、細かく写しているのも印象的だった。物語には必要ない部分もしっかりと映すところも拘りがあってなかなかに好きだったし、小道具や衣装も一つ一つ作りが丁寧で美しかった。

ただ面白いストーリーを伝えるだけのドラマではなく、”日本”と言う繊細で美しい文化を100%表現しよう!という制作者側の熱意が伝わって来るようなドラマだった。
そこが日本人として見ていてとても誇らしく思えたし、一緒に見ていたドイツ人パートナーも「いいね、かっこいいね」と言っていた。

日本の繊細な文化が、外国映画にありがちな
ドカーン!炎〜!戦〜!などの大胆な表現でなく、あえて小さく所々に仕込まれていて、まさに”日本人らしい”表現だなぁとも思った。


このドラマを見て、
「これはアートだな」とおもわず感想が出てしまうほどの繊細なドラマだったことが大衆の心をグッとつかんだ一つの要因と思う。
まさに日本文化へのリスペクトを感じられて良かった。


そしてもう一つが、「女性キャラクター達の強さ」
主人公や男性キャラクター達の存在が薄れるほど、女性陣キャラクター達の裏ボス感がとてもよかった。

特に、二階堂ふみさんが演じる落葉の方が怖すぎ。笑

同じ女としてもゾッとする怖さが良かったし、
将軍を支える通訳のマリコ様も、彼女がいなければ将軍が成り立たないくらいの有能さでもはや将軍より目立っていた。

そしてその2人とは反対に、安針に仕える藤様
おしとやかで、まさに一歩下がって男性を支える女性そのものを表したような女性キャラクターであるけれど、そんな彼女もまたピンチの時には敵へ銃を向けて夫を守ろうとする芯の強さも見えて好きだった。


そしてもう1人私のお気に入りのキャラクターは、のちに吉原遊廓を作り上げる遊女のボス。(名前は不明)
この人がある遊女の値段をめぐって同じ女性のマリコ様と値段交渉をするシーンが私の大のお気に入り。本当に美しかった。


「直接表現を好まない」ハイコンテクスト文化の日本ならではの言い回し。京都vs京都 みたいな品のある高貴なディスり合いがもう美しさと面白さ相まって終始にやけた。笑


「女性は男性の上には立てない」
「女性は男性に支えるもの」

そんなまさに日本社会らしい構造を、一味違う形で見せてくれたこのドラマ。どのシーンを見てもやはり女が強い。
「サムライ映画は男が主役」と言う概念をひっくり返すような女性陣の目立ちぶりだった。いい意味で。

自分を殺して男性や時代に翻弄されながらも生き抜く女性達が、まさにこのドラマの裏テーマのように感じられて、そこが西洋文化の大衆の心をグッと掴んだのではないかな、とも感じた。

映画Barbieの人気もあって、もはや映画の世界でも女性のエンパワメントが積極的にピックされる時代。


日本のサムライといえば、男気!戦!刀!
が代名詞のようであるけれど、
このドラマで圧倒的な存在感を出していたのは女性キャラクター達だった。

この時代の空気を読んでと言うか、
女性から見ても面白く感じれるドラマを作ったのもハリウッドの助言もあったのかなぁ?とても面白くて良かった。


第二シーズンも制作中とのことで、楽しみ。


以上、今やもはや日本よりも海外で大人気な「SHŌGUN」を観た感想でした。




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