幸せな困り事~かた無し生活の残響~
休んでいるとサボっているような気持ちになることがある。
それでも真剣に何かを続けるためにこそ能動的に時間をとって、質を良く休むことが大切だ。
先日僕が応援としてあるお店で働いていたところ、ここまでの出自や僅かな経歴を話しながら自分がいかに馬車馬労働に慣れていたのかを実感する。働き者だったのは、単に誠実で度を越して真面目だからだけではなかったのかもしれない。
自分の身にはずっと、自分史上最悪の時代の感覚がまだ残っている。その浄化を願って今回この記事を書く。
小さい頃、親戚と絵を描いて遊んだのをきっかけに、書いた絵に設定を作ったりして小~中学生には漫画を書いていた。
ただ楽しくてやっていたそれは、家庭状況のさまざまな困窮に乗じて現実逃避の手段になっていった。
家にいるあいだ、部屋に引きこもって学校も行かない。誰とも顔を合わせず1日ずっと漫画を読むか書くか寝るか食べるか、或いは学校に行ったフリをして地元を観光するか。
中々精神的に過酷な状況であっただけに、その苦しみを力ずくでもみ消すために「努力・勉強」という名の元にすべての無茶と非行を正当化しようとする。
家に帰れば親と顔を合わせることになるので、そのくらいならと野宿をする。
家から20キロ離れた漁港で動物によくわからない魚らしい肉片をお裾分けされたりして、貰った仁義で食べた上に食中毒になっても、自転車で家に帰る労力や、そこまでしてあんな家に帰るくらいなら公衆トイレで夜通し苦しむ方が何となく良かった。今思えばあれがアニサキスというやつだったのかもしれない。
また、お風呂にも入れないからホームレスみたいな風体になる。
家にいれば朝から晩まで作品を作り、外に出れば警察と学校から身を隠しながらプチ参勤交代野宿付き。何度かスリとカツアゲに遭遇し、
正直自分も何度かその手を使った。
この世に僕の居場所はなくて、自分ひとりを自分で守るしかない。友達も恋人も親子も単に集団についている名前で、人そのものは孤独だ。
言葉も単なる意味をもった合図で、全部記号で、星も風も匂いも全部が現象で、
悲しみも喜びも脳の分泌物なのでこれも現象だった。秩序は守る人が守ってるだけで、無い場所には存在しない。
だから、警戒しなければずっと危ない。
山にいれば熊がいるから冗談じゃなくマジで死ぬし、あいつらは身体がデカいから慣れない道で見つかったら自転車でも結構ヤバい。
海に近づけば寒いし、暖かいところは湿気っていて気持ちが悪い。
街中のビルの隙間ではやはり警察がいるし、
昼間はホームレスのような子供は目立つ上に、夜は酔っぱらいと集団の不良がいた。
文明は発展させておいて子供ひとりの居場所も作れないこんな社会などいつ滅んでくれても良かった。いつも全部忘れたかった。
認められる場所が欲しかったので、やはり自分を認めてくれそうな場所で働くのだがどれもが上手く行かなかった。
認められたい気持ちの青少年を雇ったお店は「私が絶対」という人のお店である場合が多かった。
敬服していることと服従することの違いを当時の自分は気付ききれていなかった。
要するに自ら服従に近い労働を受け入れていてそのテンポで働くことが当然だった。
なにより、お金がもらえて清潔な暮らしができる分だけ、野宿したり日の光を浴びない暮らしをするより快適で社会的で楽だった。
労働環境を転々としながら、本当につい半年も前まで異常な働き方を続けていて、危うくその気持ちをもう一回持ちだすところでこの記事を書いて自分を引き留めた。
頑張ることは必ず是であるとは限らない。
身体は資本で、資本は資源で限りがある。
休まなければ山を登ることもできない。
魚も熊も狸も猫も鳥も、小さな虫も植物ですら、生きるための活動をしたら寝る。
それぞれのペースが違うとしても、そのサイクルがあることは共通する。
もしかすると砂や石や地面も空も、ある時は起きてある時は寝てるのかもしれない。
惑星そのものも、もしかすると人智で気付かない呼吸をしている。
自然の理に抗うことはできない。人ごときの力を過信してはいけない。
休むときは休むべきだ。
あわてても焦っても、それで結果が出たとしても過ぎたるは猶及ばざるのと同じ。
すぐに役に立つものはすぐに役に立たなくなる。
わかりやすさに飛び付いては長続きしない。
仕事を半端にするのはサボりと言えるが、休むことはサボりとは呼ばない。休みは休みだ。仕事じゃないって。
書きながらまだまだ心の難しさを思う。
道は続いている。どこに続いているのかもわかる。すべての道は突き詰めれば愛に通じる。
終わりがわかってるなら大丈夫。
疲れたら愛することだけを考えよう。優しくて楽しい気持ちは仕事のクオリティも人間関係も支えてくれる。
柔らかく、強く、優しくね。竹とい草の香りを想像して、姿勢の手がかりを学ぶ。
「働けばいいってもんじゃない。旅路は長いが、確実へ愛へ向かっている。」
こんな悩みは、飢えと貧乏よりずーーーーうっと幸せなのだ。
休もう。自分の幸せは目の前に現れる誰かにも必ず伝わるものなのだから。
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