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思いがけず大優勝した展覧会〜国立西洋美術館「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」〜
油彩画ばかり観てしまうので、版画がメインの展示に行くのは久しぶり。
例に漏れず滑り込みになってしまった展覧会、「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」。
これが期待値以上だったので、今回も印象に残ったことを書いておく。
今回の展覧会で良かったこと
①巨匠の作品大集合special回
マネ、ドラクロワ、ピカソなど巨匠大集合。
個人的にはダリが優勝だった。
一年くらい前に、地元福島の諸橋近代美術館に行って初めてダリの《ドン・キホーテ》や《カルメン》のシリーズをちゃんと見た。
ダリもっと知りたいな〜と思っていたのが、今回は主に第1章の「ドン・キホーテとベラスケス」で登場。
《風車への攻撃》と《レダ》を観れて良かった!
②書籍『ポケットガイド 西洋版画の見かた』
もともとはイギリスの版画を勉強してみたいと思っていた。
ウィリアム・ホガースやターナー、コンスタブルなどの銅版画に関心があったが全然覚えられず、、、。
展覧会を見終わると、ポストカードと一緒にちょこんと佇んでいた『ポケットガイド 西洋版画の見かた』。
端的にまとまっていて700円とお買い得なのに、図版もいっぱいでわかりやす!
展示を見終わった後いい復習になった。
出口に置いてくれてありがとうございますという気持ち。
『西洋素描の見かた』も欲しい。
ステレオタイプと『カルメン』
スペインの持つエギゾチックな魅力が、他の西欧諸国の関心を惹きつけたのだという。
そして結局、そのように外国人たちの憧れが先行して「スペイン」のイメージが作り上げられた。
ビゼーのオペラ『カルメン』は、その良い例だ。
ジプシー、舞踊、そしてファムファタルの3点セットは『カルメン』のなかで切っても切れない関係にある。
そしてそんな『カルメン』は、現代の私たちが持つ「スペイン」のイメージのひとつかもしれない。
オペラ大好きな私もそう考えてしまっている。
そんなステレオタイプを爆破してきた(と個人的に思った)のは、私が大好きなクールベ!
陰鬱な雰囲気を秘めているこの女性は、カルメンのような男をぶんぶんに振り回すファムファタルのイメージとは異なるかもしれない。
クールベの写実主義がこの表情をとらえ表現させたのか?それともこれすらもステレオタイプが影響しているのか?
何が本当なのか分からなくなるが、それも良い。
混沌の「エスパーニャ・ネグラ」
黒きスペイン。
暗く、重く、ときに鮮烈なメッセージ性のある作品たちが展示されていた第5章。
私にとって「メメント・モリ」の概念は、ヴァニタスよりも焦燥感を掻き立てられるようだ。
この企画展の後に常設展で《ヴァニタス》を改めて観ると、「そもそもこの世って空虚じゃん」という感じで生きることに執着を感じない。
《メメント・モリ》を観ると今にも死が身近にやってきそうな感覚に襲われ、より良く生きることを渇望したり、生が無情に奪われることに対して憤ったり。
そんなことを考えさせられるし、第5章の展示全体からそのような声が聞こえるような気がする。
いつもながら、学芸員さんすごい。
このテーマを今扱うことは、非常に意味があると思う。
一緒に観ると深まった「美術館の悪ものたち」
常設展も久しぶりにゴリゴリに見た。
やっぱりミレイとロセッティをガン見してしまう。
小企画展「美術館の悪ものたち」は、ちゃんと観たかったのだが企画展より混んでいてあまりゆっくりできず。
デューラーとブレイクが見れたのは良かった。
特に「魔女」と「死」にかかわる部分は、企画展と合わせて考えるとかなり深まると思う。
山田五郎さんのYoutubeで気になっていた、ロップスの作品も!
次の小企画展はイギリス19世紀美術!めちゃくちゃ楽しみになった。
国立西洋美術館大好き。