【IDと教員研修24】「ステップをはっきりさせて教える」運動技能の指導方略
前回の記事では,学び方を学ぶといった認知的方略の指導方略について考えました.今回は,からだに関する学習目標「運動技能」の指導方略について教員研修をイメージしながら考えていきましょう.
筋肉を使って体をコントロールする技能
筋肉と聞くと,パワーが湧き出てくるようなイメージになるかもしれませんが,それだけではありません.
例えば,「鉛筆でまっすぐな線を引く」は,運動技能です.腕と掌の筋肉をコントロールすることによってまっすぐな線を引けるようになります.
GIGAスクール構想においては,タイピングの指導も大切です.教室では一体どのような指導が行われているでしょうか.
例えば,GIGAスクール構想のもと,はじめて教室に情報端末が入ってきた様子は,このような本からイメージすることができます.タイピング練習についても参考になります.
体育はもちろん,運動技能の習得が目指される教科です.機械運動のような運動技能を身に付けるためには,どんな指導が考えられるでしょうか.
ステップを考える
キーワードは,「丁寧なステップ バイ ステップ」です.
例えばタイピングを思い浮かべてみましょう.両手でタイプするときに,どの指で,どのキーを押すことから技能習得が必要でしょうか.
やはり,一本指で「あ・い・う・え・お」と打つところからでしょうか.
でもそれだと,基本ポジションにつながりにくかったり,変な癖がついてしまうかも知れません.
ステップを考えるときには,上がった先のステップにつながることを意識して,そこから逆算して階段の高さを考えます.タイピングであれば,まずはキーボードに触らず,紙のキーボードの上で運指の練習をすることからスタートすることが考えられます.基本ポジションに沿って,右手の人差し指,中指,薬指,小指…というように少しづつ動かし方をマスターします.
モデリングと練習を繰り返し,少しづつ手順を委ねる
最初は一緒に,ワンツーワンツーと進めます.簡単な技能はすぐできるようになるので,「じゃあ一人でやってみよー」と促します.
ステップも,最初は一つずつ上がっていけるようにしますが,うまくいくようになってきたら,複数のステップを繋げて再現できるようにします.
例えば,全ての指で運指がスムーズになったら,全ての指を使ってできるタイピング練習について,ステップの低いところから高いところまで振り返りながら進めるようにします.
慣れくると,子供はステップが高いところからスタートしたがるかもしれません.しかしあえて,少し低いステップから確かめさせます.
このようにすることで,どのステップまではできているのかを自ら確かめる習慣がつきます.運動技能は,「何をすることはできて」「何をしようとするとできないのか」の線引きがはっきりすることが大切です.自分の技能を分解できるようになれば,自分でステップを細かく設定できるようになるからです.
できるようになってきたら,様々な視点で「磨く」練習
一人でできるようになってきたら,スピード,正確さ,タイミング,スムーズさなどを磨く練習を行います.
これらの視点は,一概に順番があるわけでなありません.個々が磨くべき課題を見つけられるようにすることが大切です.
さて,ここまでタイピングを例に運動技能の指導方略を考えてきました.教員研修であれば,これらの指導方略を考える研修が考えられるでしょう.
私が出会った先生方の中には,上述のような運動技能を教えるスペシャリストがたくさんいます.スモールステップで,的確に,確実に子供に技能を付ける指導です.体育のみならず,鉛筆の持ち方や挨拶の仕方,歌の歌い方まで,見事にステップを描ける先生です.
そしてその方略には,一定程度の基礎的な教授方略と,先生方のオリジナル方略がありました.これらを交流するだけでも,価値ある研修になりそうですね.
次回は,学習目標の指導方略ラスト,態度について考えていきましょう.