眠れない夜の処方箋 クセになる笑い声
真夜中に偶然辿り着いた…その枠は混沌とした空間だった。
ライヴに入った瞬間、静かな音楽が流れたと同時に女の笑い声が耳を直撃してきた。
何だ?このライヴ?と思いながら画面を見ると…
顔文字、絵文字を多用したコメントが鬼のように流れている。
配信主である女は時々コメントにツッコミをいれながら笑っているだけである。
特に何かを話すわけではない。
うーん…
ここは何なんだ?
俺はライヴを聴きに来てるんだよな?
初見は無視するタイプの配信者なのか?
俺は今晩は!とコメントを入れてみた。
すると、あっ!初見の方ですね?
今晩は!いらっしゃいませ!と言った後に俺のアイコンをタップして確認したのか、プロフィールを読み上げた後に…
「ごめんね!私、飲みながらリスナーさんのコメント読んで笑ってるだけなんだよね。特に話す事もないんだけどさぁ…
ねぇ!コメントで絡んでみて?」とむちゃぶりしてきた。
お前!話す事無いのにライヴ立ち上げるとか意味分からん!と思いながら適当にコメントを打ってみると楽しそうにコメントをネタに話を広げていくのだが、基本話すよりも笑っている時間が多いようだ。
画面をよく見ると…
リスナー達も彼女を笑わせる為にコメントしているらしい。
彼女の笑い声を聴いているうちに、いつの間にか眠っていた。
起きた時には昼近くになっていたのだ。
久々によく眠ったもんだ。
それにしても…あのライヴ何だったんだ?
あの女…いつも笑ってんのかな?
何て名前だった?
そう思いながらスタエフを開くと…
新着ライヴの一番上に彼女のアイコンが…
あれ?俺は無意識にフォローしてたのか?
ライヴにスーッと入っていくと…
今朝も彼女は大爆笑している。
俺がおはようとコメントすると笑いながら、
「おはようございます!あっ!夜中のライヴに来てたよね?
ねぇねぇ…特に話すことないからさぁ…
何かコメントしてくれない?」
お前!またか!話す事無いのに何でライヴ立ち上げるんだよ?と思いながら俺は彼女を笑わせる為にコメントを打つのだ。
そして…しばらくするとまた俺は眠ってしまったのだ。
彼女の笑い声には俺を眠らせる何かがあるらしい。
だから眠れない時には彼女のライヴを聴きに行くのだが、最近はあまりライヴをやってないから仕方なく収録を聴いたりしているんだが…
お前…収録のひとり語りでも笑ってるじゃないか?
お前の笑いのツボ…浅すぎないか?
大丈夫か?と脳内でコメントしながら…
知らないうちに寝ていた。
やはり、彼女の笑い声には何かしら眠りに誘う成分が含まれているらしい。
目覚めたら彼女のアーカイブが流れていて、やはり彼女は笑っているから俺もつられて笑いながら、いいねボタンを押した。