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恋がしたくないわけじゃない

「もしもし、麻希さん?

どうしたの?何か予定が入った?」

「ごめんなさい。

約束の時間に間に合いそうもないから今日の予定キャンセルしてもらえないかな?

当日にこんな事言って本当にごめんなさい。

仕事でトラブルがあって今からクライアントの所へ謝りに行く事になってしまったの。

今度会う時に好きなお酒奢るから…

本当にごめんなさい。

じゃあ、私行くから…またね」

今月に入ってデートのキャンセルは、これで3回目になる。

つき合い始めて2ヶ月めのふたりだが、まともに会えたのは最初のデートの時くらいなのだ。

いつも、麻希の方に何かが起こりデートが中断されたり、デートの予定をキャンセルしなくてはいけない事態に陥るのだ。

これまでは、笑って許してくれた侑也さんでも、流石に今回は許してくれないかもしれない…

侑也さんの冷たい声は聴きたくないなぁ。

そう思った麻希は、キャンセル理由を早口で説明して通話を切ろうとした。

「待って!

切らないでよ?

麻希さん、まだ朝の9時なんだから約束の10時には間に合わなくても今日中には会えるんじゃないの?

仕事が終わったら連絡してくれるかな?

遅くなってもいいから」

「えっ?

侑也さん、怒ってないの?

今月3回目のキャンセルだけど…」

「どうして怒る必要があるの?

麻希さんは、自分で会社をやっているんだから何かトラブルがあれば代表である麻希さんが呼び出されるのも仕方がない事でしょ?

麻希さんが、僕に会いたくなくて嘘をついているのなら怒るかもしれないけどね。

仕事なんでしょ?

気をつけて行っておいでよ。

トラブルを起こした部下には優しくしてよ?

時間ないんでしょ?

早く行きなよ?

じゃあ、待ってるから」

「侑也さん…

有難う。行ってくるね。

後から連絡するから待ってて」

良かったぁ…

別れ話にならなくて…

やっぱり侑也さんは大人だわ。

私が今まで関わってきた懐の狭い奴らとは全然違う!

その後、麻希は部下から何をニヤニヤしているんですか?と声をかけられるまで待ち受けにしているスーツ姿の侑也を眺めていたのだった。

麻希より5歳年上の侑也は、今のところ彼女の理想の恋人なのだ。

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