カルアミルクを飲みほして
エスプレッソトニックだって、あなたが好きだって言うから飲んでみただけなんだ。
最初は、美味しいなんて全く思わなかった。
そもそも僕は、あなたを好きになるまで珈琲も苦手で飲めなかったんだから…
知らなかったでしょ。
年上のあなたに子供だって思われないように、いつだって背伸びしてたんだよ。
少しでも、大人っぽくなりたいと苦くて不味いだけと思ってた珈琲に挑戦したり…
本当は甘いお酒しか好きじゃないのに、あなたが大好きなビールを頑張って飲んでみたり…
いつからだろうか…
あなたを好きになりすぎて、自分らしさを見失っていたのかもしれない。
本当に馬鹿だよね。
付き合って欲しいとあなたに告白した時…
そのままの自分を見せられる相手を選んだ方がいいって言われた時は、目の前が真っ暗になった。
今まで僕がしてきた事は空回りでしかなくて無駄だったのかなって…
あなたの言葉を真正面から受け止められなくて、臆病な僕は逃げ出したんだ。
自分の気持ちに自信が持てなくて…
今は背伸びしたり、無理したりしてるように見えるかもしれないけど何年かかってもあなたの隣に立って、あなたを支えられる男になりたいって伝えたかったなぁ。
少し濃いめに作ったカルーアミルクをジョッキで飲みながら、僕はため息をつく。
お酒が飲めないわけじゃなくて、子供舌だから苦いのがダメなんだ。
ビールの苦味は未だに慣れなくて…
美味しいとは思えない。
歩未さんがあまりに美味しそうに飲むから、ビールを好きになりたかったんだけどなぁ…
ビールは好きになれそうもないんだ。