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#小説
僕がやるから あんたはちょっと黙ってろ
8.
AKAZUKINのイベントの後、僕は急速にパンクに向かって走っていく。セックス・ピストルズの再結成には5回行った、なんてうそぶきながら、実のところ、クラッシュやP.I.Lやポップ・グループ、ニュー・ウェーヴは大好きだったものの、例えば3コードで搔き鳴らされるストリクトリー・パンク・ロックはまったく、そうまったく知らなかった。初台ウォール、中野ムーンステップ、武蔵境スタット、高円寺ギアや20
未来は俺等の手の中3
5.
11月のイベントが決まった。きみ、オーガナイザーとしての素質があるよ。そんな電話に乗せられた、といっても、正直そのころには、夕方に鳴る突然の電話に少し、いやかなりびびっていた。今回は前回の太郎ちゃんに加えて、ずっとDJをやりたがっていた同級生のシンガーをまねいた。時間はいつもの8時から11時に戻してもらった。それでもノルマは2000円×30人。楽観していた。前回の成功もあるし。ひとは来るで
未来は俺等の手の中2
4.
いきなりイベントをやることになったのが、8月頭のぶっきらぼうな電話。9月半ばの土曜日。きみさ、オーガナイザーとして育てたいんだよね。店長は前回の支払いの時、なけなしの1万8千円を支払うときもそういった。これはさ、札束を握りしめ、将来への投資だからね。今は我慢。タロック君とか誘ってさ。イベントやれば?。オーガナイザー?でも育てたい。よくわからないけれど、オールナイトのイベントのオーガナイザー
未来は俺等の手の中1
3.
その次のDJは意外とすんなりと決まった。やはり夕暮れにかかってくる電話。ぶっきらぼうに、7月27日金曜日にオールナイトで、と店長は告げる。2000円2ドリンク。フジロックの初日だった。とはいえ僕は一日だけ前の年に行ったきり。いわゆるフジロッカーではなかった。21時リハーサル、22時オープン。下北沢で買った灰色のシャツを着て、50枚のCDと2万円のヘッドフォン、選曲リストの書いてある小さなノ
YOU saved a DJ life.(仮)
1.
暑い夏の真昼、僕はいつものようにたくさんのレコードが入っている黒いケースの中から、すぐにターンテーブルに乗せやすいようにそこからさらに何枚かを斜めに立てたその中から、一枚のレコードを感覚で選び、ジャケットに書いてある曲順を見る。それからレコードの真ん中、ラベルを見て表裏を確認すると、レコードを左側のターンテーブルに置く。目を近づけて、凝らしてよく見ると見える、レコードの外側の端から三番目の
急にね、あなたはいう。
君といた時間は、いつも煙草の煙が辺りに立ち上っていた気がするし、君といた時間から現在にかけてが、中村一義が出す曲を時系列でなぞるみたいに過ぎていく。
大学ってところは、入学したあと直ぐに仲良くなる友達とは、割と早い段階で、挨拶を交わして通り過ぎる程度の距離に落ち着く。
それでも地方からこっちに出てきて、はじめての一人暮らしをする彼ら彼女たちの家では、夏の試験期間まではお泊まり会があるし、マル