見出し画像

入院雑記vol.14『平衡』

消灯時間になっても
寝付けなくて天井を眺め続けていると、
いつの間にか過去の美しい思い出に浸って
優しく微笑んでる自分がいる。

悲しいことばかり思い出さなくなったのは
とてもいい兆候だ。

入院当初は、
自分の境遇や性格、これまでの人生に
悲観してばっかりで死にたかったから。

きっかけはいまだに思いだせないけれど、

こうなれたのは沢山の本や映画で
退屈な時間を埋め合わせしてきた
おかげかもしれないし、

どん底まで追いやられたから、
もうあとは上がっていくしかないという
諦めにも似た空元気のおかげかもしれない。

でも、
自分が好きな時間を過ごそうという
その心がけをしていたことが
功をなしたんじゃないかな、と、そう思う。

よって恥の出来事を思い出しても、
完膚なきまでに叩きのめされ、
消えたいのに消えられないという、
悶え苦しむ気持ちには
ならなくなった。本当に凄いことだ。

まるで端から端へ流れ出すシーソーに
均一な重さのおもりがそれぞれ付けられて、
平衡を保つようになっている感じ。
たまにギーコ、ギーコと揺れ動くが、
ピタッとはならなくても、
真っ直ぐを保とうとしてくれている。

色で例えるなら、
それは白でも、黒でもない。
グレーだ。
その色は、見方を変えれば
ゴニョゴニョとしていて、
気持ち悪いかもしれない。

そんな曖昧な感情が前は許せなかったのに、
どこか開き直れる自分がいることに驚く。
人より能力的に欠けていても、
人より丸っきりダメでも、
世間的に負け組でも、

そんな自分でいいんだ。
これでも幸せになれるんだ。

そう思える。

この境地に立てた自分が信じられない。

なんでなんだろ。

訳がわからない。

だけどこれは悪い意味ではなく、
むしろ私にとってはハッピーな混乱で、
平衡になった理由を考察しようにも
考えがまとまらなくって、
本当の心の底から、
(もういいや)と思える。

その(もういいや)は、
喧嘩別れをした彼氏のことを考えるのに
疲れちゃって、振り切ろうとするにも、
やっぱり後で何回も振り返っちゃっては
悶々とする感じではなくて、

天気のいい日に湖に行って、
波紋が、岸辺から島の向こうまで
穏やかに伝っていくのを眺めるような、
とても静かで、澄んだような感じだ。

(もういいや)の後に言葉は生まれず、
心地よさだけが私のそばにある感じ。

とても気分がよくて、
息がしやすい。こんな気持ちはじめてだ。

どうやって私はここまで辿り着いたんだろう。

また悪くなるのかもしれないけど、
一番心が平穏で安心だ。

今日はそれを、これに綴っておきたかった。

入院雑記、以上。

PS デンマークの友達に綺麗な川(river)でしよとこの写真を送ったら、これは小川(brook)と呼ぶんだと教えてくれた。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?