あなたを好きになって
aikoの楽曲に「熱」という短い曲があります。
私の中のaikoは、赤い色、甘すぎるいちごキャンディ、水玉のスカート。そんなイメージですが、この「熱」という曲は、少しそれらから離れ、異色。
「熱」はたしか昔のアルバムの一番はじめに収められた曲で、収録曲にカウントするのかしないのか迷うほどに短く、静かなのです。
あなたを好きになって 胸がこそばゆい
うまく笑えないし さよならが嫌い
だけど だけど
あなたがいるとそれだけで
あなたがいるとそれだけで嬉しい
あなたが好き あなたとキスしたい
文字で並べてみたら、やっぱりaikoらしい。でも、どうしてもこの曲からは朝の寒い吐息のような、一人で流す涙のような、一種の"死"に近い哀しさが感じられて仕方がないのです。
この曲を聴くと、勝手ながら吉本ばななさんの「ムーンライト・シャドウ」という短編を思い出します。
大好きな恋人と死に別れた女の子が、不思議な体験を通して、その悲嘆を乗り越える話。この女の子が、苦しくて悲しくてあまりの辛さに発熱しながら、毎朝、明け方の中をジョギングをします。
これは物語。それなのに、彼女の気持ちが、苦しみが、めまいが、吐き気が、恋心が、その目に映る全ての明け方がありありと私には見えてしまい、たまに息苦しくなります。そして、その時の彼女の体温と、aikoの「熱」が同じ温度を持ち合わせているような気がして。
誰かを愛おしいと思う気持ちは、強ければ強いほど、その裏に「喪失」が隠れている。
そんな想いを抱えている人に、この曲とこの物語を知って欲しいと魂から声がした(気がした)ので、このnoteをしたためます。
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