人生の岐路を走るはバス
電車でもなく、車でもなく、バス。
バスってなんだかとても不思議な乗り物である。公共物なのに家の前とかにちょこんと止まるし、運転手はすぐそこにいるのに止められそうで止められない。
私は乗り物恐怖症なのであまりバスは好きではないが、いろんな曲の中に登場するバスの位置づけに少し、哀しさや切なさを感じてはハヒハヒしている。そんな選りすぐりのバス曲たちについて。
ゆず/サヨナラバス
ゆずの代表曲。こんなに爽やかな歌声が余計に離ればなれを寂しくさせる。
「どうか来ないでおくれ」と頼めるくらいに念力が届きそうなのがバスの魅力であり、悲しくもあるところ。バスを擬人的に歌っているところがとてもオツ。
探偵ナイトスクープでこの曲がモチーフになった回があり、そこから好きになった。
いつかまた、バスが彼女を乗せてこちらへ戻ってくるといいなぁと誰かの願いを願わずにはいられない。
ゆずの仲間力よ。
チャットモンチー/バスロマンス
名曲を残しまくったチャットモンチー。
某チョコレートのCMで流れていて「ヤバス」と思って耳を澄ましまくったのが「バスロマンス」。高橋久美子さんが友達の結婚式のために書き下ろした曲。
遠距離恋愛なのか、「あなた」を遠く連れて行ってしまうバスが、サビや最後のところで「二人だけを乗せ」る乗り物へ変化されるところにほろりとくる。「あなた」を待っていて良かったね、といつも思う。
この曲は聴けば聴くほどに、単純に「恋愛」だけを描いてなさげな部分が不思議な魅力を持つ。「結婚おめでとイェェェイ!」だけではなくて、「死ぬまで一緒であることの覚悟への祝意」すら感じられる。
これはチャットモンチーの底力だとも思う。
THE BLUE HEARTS/青空
社会科の教科書をひらく前にこの曲を聴いてくれないか?と若人にお伝えしたい。
miwaが優しくカバーしてて、インディアンたちが逃げ回る姿が頭から離れなくて苦しい時期があった。
この曲の「僕」は、きっととても辛い。
バスに乗っけてほしいと運転手さんに頼んで、どうするつもりなのか。逃げるわけでもない、幸せになるわけでもない。歴史に残る苦しみも、個人的な名もなき苦しみも掬い上げている。誰かや、私や、あなたのための曲。
とても悲しいことがある時に限ってすごい青空の時がある。雨すら願うほど。でも、それは皆思うことなんだなって教えてくれた曲。
スピッツ/運命の人
ロビンソン並みの恋歌だと思ったら大間違いです!家を買う時のためのテーマソング…でもない!
この曲は「♩バスの揺れ方で人生の意味が分かった日曜日」から始まる。ん?である。
歌詞は一文一文が俳句みたいになっていて、文脈を読み解くのは難しい。
ただ、この曲のPVを見たら少し答えが分かる(気がする)。
もしかしたら私の今の人生も次の停留所までくらいの一瞬で、ちょこっと眠っている間に終わっちゃうかもしれない。そしてまさかのまさか、「生きている」こと自体が夢想かもしれない。草野マサムネさんはそんなことを言いたかったのかもしれない。
きっとはるか想像を容易く越えるほど重みのあることをテーマにしているはずだ。ここまで軽やかに歌われたら、重力に逆らえず飛んでいってしまいそう。地に足をつけるためには最後のちょっと怖いドラム音が必要であり、このドラム音こそ「身体を持つこと」の重さでもあるように感じる。
言語化するのがかなり難しい一曲。
以上、4曲のバスが登場する曲でした。
私は、100円で奈良市内を回れるバスが一番好きです。
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