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Short Story

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散文詩風な超短編から、プロローグ、ショートショートを含む短編小説。
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#江戸時代

【SS】この愛は透き通ってる(2011/05/25)

 海は広くて大きくて、こんなにも青く輝き、それでいて深みのある色なのに……手にとると、無色透明に広がって、瞬く間にこの指をすり抜ける。  そこに確かに残るのは、潮の香りと湿り気だけ――それもスグに消えてしまう。  まるであの人みたいだと思った。わたしの前に存在しているのに、つかみどころの無いあの人……  真っ直ぐで、純粋で、みんなに愛されて、頼りにされて……普段ちっともそんな素振りを見せない、冗談ばかりの明るい人なのに、その中に秘められた牙は鋭い。  人の上に立つ資質や才能

【SS】貴方に似合うは無垢な花(2011/05/17)

 この人はとても優しくて、真っ直ぐで、温かくて、純粋で……わたしに向かって夢を語るこの人の瞳は、吸い込まれそうなほどに澄んでいて、キラキラと輝いてる。  強くて、逞しい、誰からも好かれるような、最高にカッコいい人だと思うし、心から尊敬してる。  とてもとても憧れて、大好きで、惹き付けられて止まない・・・  だけど、だからこそ―――  わたしはこの人に触れたくない。近づきたくない。それがこの人を傷つけることになるって分かってる……分かってるけど、見たくない。  側にいるの