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【じゆうけんきゅう】なぜ通信制の小中学校がないのか 1/3

はじめに

「この記事が話題になっていますね」というには時間が経ってしまいましたが、不登校の10歳のユーチューバーが話題になっていましたね。

ライターであり、無料塾の代表を務めている友人も以下のような記事を書いていました。

このYoutuberの件については多くの方々がコメントしていらっしゃるのでそちらにお任せするとして、本件に関連する記事としてこんな記事が目にとまりました。

この記事の中で、「高校の場合はN高などができているが、義務教育課程の場合、あまり受け皿があるわけではない。だから大人たちは無責任に“行かなくていいと“言うのではなく、代わりの場所をちゃんと用意する義務があると思う。その責任を果たしながら“行かなくていい“と言いたい」というリディラバ代表の安部敏樹氏のコメントがあります。

そう、義務教育段階(小学校・中学校)では高校のような一般的な通信制がないんですよね。以前、そのことについて調べてTweetで連投したことがあったので、ここでまとめておこうと思います。Twitterってどうしても流れて行ってしまいますからね。ここでまとめておくことで、自分もまた読めて良いかなと。

以下のようなお献立でお送りします。長くなったので全3回に分けました。

【献立】
はじめに
1.実はあった中学校の通信制
2.通信制中学に関する制度
3.おじいちゃん・おばあちゃんに限定した通信制中学校の趣旨
4.そもそも通信制の趣旨って?
5.通信制高校が選ばれた本当の理由
6.通信制を選択した生徒のバックグラウンド
おわりに

1.実はあった中学校の通信制

あったんですね、実は。上で「一般的な通信制がない」と書いたのはこのためです。現在では千代田区立神田一橋中学校及び大阪市立天王寺中学校の2校のみのようです。神田一橋中学校の沿革によれば、平成30年度の新入生は1名だけです。1名て。

2.通信制中学に関する制度

高等学校及び大学については、以下のように学校教育法の中で通信制の課程を置くことが可能であると明確に規定されていますが、小学校及び中学校に関する章(第四章及び第五章)にはこのような規定はありません。

〇学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)
第五十四条 高等学校には、全日制の課程又は定時制の課程のほか、通信制の課程を置くことができる
2 高等学校には、通信制の課程のみを置くことができる
3及び4 (略)
第八十四条 大学は、通信による教育を行うことができる
第八十六条 大学には、夜間において授業を行う学部又は通信による教育を行う学部を置くことができる
第百一条 大学院を置く大学には、夜間において授業を行う研究科又は通信による教育を行う研究科を置くことができる
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000026

中学校の通信制は法律の本則ではなく、附則に規定されています。

〇学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)
附 則
第八条 中学校は、当分の間、尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者に対して、通信による教育を行うことができる
○2 前項の教育に関し必要な事項は、文部科学大臣の定めるところによる。
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000026


尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者」って誰…。

1886年の小学校令によって初等教育機関として尋常小学校が置かれ、1941年の国民学校令に国民学校初等科に名前が変わり、1947年に小学校に改組されました。「尋常小学校卒業者」の最後の修了者は1941年に12歳だったわけですので現在90歳、「国民学校初等科」の最後の修了者は1947年に12歳だったわけですので現在84歳でしょうかね。84歳以上のおじいちゃん、おばあちゃんですね。

第2項で「前項の教育に関し必要な事項は、文部科学大臣の定めるところによる」とありますが、同法の施行規則には以下のような規定があります。

〇学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)
附 則
第十三条 学校教育法附則第八条の規定による通信教育については、別に定める
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000026

別…。

法令検索で「学校教育法附則第八条」を調べてみたところ、以下のものが出てきました。短いので、全文を。

〇中学校通信教育規程(昭和二十二年文部省令第二十五号)
第一条 学校教育法附則第八条の規定により、中学校が通信による教育(以下通信教育と称する。)を行う場合は、学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)に規定するもの(同令第七十三条に規定するものを除く。)のほか、この規程の定めるところによる。
第二条 中学校の通信教育を受けることのできる者は、昭和二十一年三月三十一日以前の尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者に限る
第三条 公立及び私立の中学校が通信教育を行おうとするときは、その設置者は、左の事項を記載した書類を添え、監督庁の認可を受けなければならない。
一 通信教育に関する規則
二 経費及び維持方法
三 通信教育開始の時期
○2 前項第一号及び第二号の変更は、監督庁の認可を受けなければならない。
第四条 前条の通信教育に関する規則中には、少くとも左の事項を記載しなければならない。
一 教科課程に関する事項
二 指導に関する事項
三 試験方法及び課程修了の認定に関する事項
四 通信により教育を受ける生徒(以下通信教育生と称する。)の定員及び職員組織に関する事項
五 入学、編入、退学、転学に関する事項
六 入学料及び各教科別受講費に関する事項
○2 前項第一号乃至第三号及び第五号に関する事項は、通信教育指導要領の基準によらなければならない。
第五条 通信教育を止めようとするときは、其の設置者は、その事由及び通信教育生の処置方法を具し、監督庁の認可を受けなければならない。
第六条 校長は、欠員ある場合は、適時入学及び編入を許可することができる。
第七条 通信教育を行う中学校においては、通信教育を担当するため、専任の教諭を置かなければならない。
○2 前項の専任の教諭の数は、通信教育生百人以下の場合は一人、百人を超え二百人以下の場合は二人、二百人を超える場合は、二百人を加えるごとに一人以上の割合でこれを増加することを基準とする。
第八条 各教科の受講並びに修了に関することは、監督庁の定めるところによる。
第九条 校長は、正規の受講資格はないが、相当の年齢に達し、相当の経験を有する者で、特定の教科を修学しようとする者あるときは、当該教科を受講するに足る学力があると認めた場合に限り、別科生として受講を許可することができる。
附 則
第一条 この省令は、公布の日からこれを施行する。
第二条 この省令における監督庁は、当分の間都道府県知事とする。但し、第八条の場合は文部大臣とする。
附 則 (平成一九年一二月二五日文部科学省令第四〇号) 抄
この省令は、学校教育法等の一部を改正する法律の施行の日(平成十九年十二月二十六日)から施行する。
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322M40000080025

ここでも「中学校の通信教育を受けることのできる者は、昭和二十一年三月三十一日以前の尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者に限る」とされています。やっぱりおじいちゃん、おばあちゃんが対象ですね。不登校で悩む現役の中学生は対象となっていないようです。だから新入生が1人だけ、ということになっていたんですね。

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今回はここまで。次回はおじいちゃん・おばあちゃんに限定した通信制中学校の趣旨そもそもの通信制の趣旨について、文部省(当時)による国会答弁から見ていきます。