ひとりぼっちのくろ_1
子猫が目を開けたとき、周りは真っ暗だった。
真っ暗で、ひんやりとしていて、何も見えなかった。
それでもじっと闇を見ていると、広い空に星がまたたいているのが見えてきた。
見える星の数はだんだんと増えていき、やがて、天の川がはっきりとわかるくらいになった。
天の川を横切って、大きな鳥の影が見えた。鳥は、ばさばさと羽音を立てて、子猫の前に降り立った。
「目を覚ましたね、くろ」
鳥は子猫に話しかけた。
「あたしは、あほうどりのホーホ。おまえは、この間の嵐で、お母さんやきょうだいたちと、はぐれてしまったんだよ。でもまあ、命が助かったんだから、運がいい。ついてるよ、くろ」
「お母さんや、みんなは、どうなったの」
急に強い雨が降ってきた後のことを、くろはよく思い出せなかった。
ホーホは、答えづらそうに言った。
「みんなが住んでいた港に大きな波が来て、みんな、どこに行ったかわからなくなってしまった。あたしは、波にさらわれそうだったおまえを、すんでのところで口にくわえて、安全なところまで連れてきたんだよ」
くろはそれを聞いて、にゃー、と泣いた。
「これからどうしたらいいの?」
「あたしが面倒を見てやりたいところだが、鳥は猫の親にはなれないんだよ。だから、がんばって、自分の力で生きるんだ。なあに、猫はもともと群れない動物だから、だいじょうぶ」
とはいえ、ホーホはくろをこのままほおっておくことはできなかった。
「泣くのはおよし、あたしにいい考えがある。いいかい、おまえは人間の家にもらわれるようにするんだ。うまくしたら、ご飯も寝るところももらえて、ずっと幸せに暮らせるよ」
その夜、くろはホーホの翼の下で眠った。
(つづく)
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