美も真理も、まるごと。オラファー・エリアソン
2020年1月までテート・モダンで開催されていたオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)展”IN REAL LIFE” が素晴らしかった。この展覧会の後は日本の東京都現代美術館でも展覧会が予定されていたから、どんな展示になるのか楽しみにしていたけれど、現在、covid-19の影響で開幕が延期されているようだ。そこで、無事の開幕を楽しみに待ちながら、ロンドンでの展示の様子を振り返ってみる。
テート・モダンでの展示は、過去作から最新作まで、平面作品・インスタレーション、屋外プロジェクトと多彩な作品群が展示される、総覧的な展覧会だった。 エントランス付近に吊り下げられた輝く球体のインスタレーション作品に、入場前から目を奪われる。この展覧会を楽しみにしていた人は多かったようで、広い会場は初日から大勢の人であふれていた。
アイスランドとデンマークの国籍を持ち、アイスランドで子ども時代を過ごしたというオラファーの作品は、光、虹、霧など自然環境が生み出す現象を思わせる、神秘的な見え方をする作品が多い。下の写真は"Beauty"という作品(1993年)。暗闇の中に微細なミストが降り、虹のような光が揺らぎ続ける。
一見しただけでは、光源の位置や水流などがどういう仕組みになっているのかわからない。けれど、刻々と移り変わる光の姿に惹きつけられ、いつまでも見ていられる。作品の懐に入るかのようにして体験し、初めて作品の全容やテーマが理解できる。それも、頭で考えるだけでなく五感と直感、そして想像力を開いて理解する。そうさせてくれるところが、オラファーのアートの凄さだと思う。
上の写真は"A descripition of a reflection"(1995年)。生き物のように移り変わる光と影。なぜ、こんな形が見えるのかーー。この作品では、その仕組みまでも見えるように展示されていて、その仕組みも含めて明瞭で美しい。
体感という意味では圧巻だったのが、"Your blind passenger"(2010) という作品。人工的な霧のような粒子で満ちた細長い通路を歩く。手を伸ばす範囲さえもよく見えないが、進むうちに、様々な色の光に包まれてゆく。
彼の作品は、ひと目見ただけで強いインパクトを感じ、美しいだけでなく意外性に満ちていて「今、私が観ているものは何なのか」「なぜ、このような色や形が見えているのか」と考えずにはいられない。私たちから科学的考察を引き出し、さらに地球環境や人類の在り方に向けて意識を開かせてくれる。展覧会では他にも、オラファーがこれまでに行った様々なプロジェクトの記録映像やドローイング、メモなどが大量に展示され、オラファーの作品コンセプトや制作プロセスに触れることができた。
同年11月から2020年2月までのアイスランド・レイキャビク 美術館での展示では、アイスランドの流氷を定点観測的に撮影し、氷河が年々縮小していくありさまをストレートに見せる作品を展示したオラファー。彼の関心は常に現在の地球環境にあり、刻々と作品に反映されている。このcovid-19パンデミックの状況も、今後何らかの形で彼の作品コンセプトに反映されるのではないだろうか? だとしたら、それはどんなものになるのだろう?と、妄想膨らむ月夜と猫でした。
(開催期間:2019年7月11日〜2020年1月5日 会場:TATE MODERN)
※撮影/月夜と猫(イギリスの美術館では基本的に作品撮影が許可されています。)
🎵読んでいただいてありがとうございました。また次回もどうぞ。
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