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現代の呪縛

私は、倉庫で仕事をしている契約社員。

正社員を目指している人。
定年退職後に入社したパワフルなご年配の方々。
様々な理由で仕事を辞めて、転職先が決まるまで席を置いている人。
パートタイムで働く主婦たち。
フリーランスで仕事をしつつ、副業として働いている人。
留学生を含む、日本に暮らす外国人。
とにかく多種多様な人々と共に仕事をしている。

実際、社員登用で昇格していく人も多いけれど、
倉庫内作業を「夢の職業」としている人は少ないだろう。

私もなぜ今の仕事をしているかと言ったら、
給与/シフト/通勤を鑑みた時に、
自分の生活に1番都合がよさそうだったから。

この仕事なら、給与面で生活もなんとかなるし、
彼と生活リズムも合わせられるし、家からも近い。

あと、個人的には、体型の維持や、運動不足解消を考えたときに、座りっぱなしの仕事は嫌だなあ、と思っていた。

今の仕事は楽しいし、周りの人たちも面白い。
上司は優しいし、黙々と作業をするのも割と向いている。
福利厚生も充実しているし、休みも多い。
だから、個人的には今の生活に満足している。

でも、ある時、
カウンセラーとして開業していて、運動不足解消のために片手間で軽作業をしているおじさんと話す機会があって、

「アンテナをちゃんと持っていれば、きっとやりたいことが舞い込んでくるよ。見つかるといいね!」
と言われた。

私は今の生活に満足していて、規則正しい生活ができて、心も身体も健康的だなと感じているのだけれど、そのおじさんにとっては「倉庫作業=束の間の宿木」のようなイメージなのだろう。
長く働く場所という感覚ではないんだと思う。
きっと、私の年齢を考えた上でも、まだまだこれから私は何者にでもなれると思っているんだろう。

それは嬉しいことだけど、「私はやりたいことを見つけなければいけないのだろうか」と考えてしまった。

少し前に、『やりたいことの見つけ方』なんて本が大ブレイクした。
世界はどうやら、やりたいことのあることや、やりたいことを仕事にしていることがやっぱり良しとされるらしい。

一昔前は、親の商いを継ぐのが当たり前だったり、もっと前は、農民の子は農民、武士の子は武士だったはずで、自分のやりたいことについて思い悩む必要はなかったのだろう。

ともあれ私は、何か自分にぴったりなものがあるのかもしれないと思って調べものをしたり、挑戦したり、振り出しに戻ったりしながら焦るフェーズは、20代に置いてきた。

ただ粛々と、凪の生活を重ねていく。
それに満足する。
それじゃ、駄目なのかしら。

職業選択の自由は時に残酷。
そして、
「やりたいことを仕事に!」というよく聞くフレーズは、私のような人間を苦しめてきた。

いろんなことを割り切って、30歳を迎えて、引越して、今までのしがらみからも抜け出して、逃げ切ったはずだったのに、また、「やりたいこと」が私に追いついて、捕まって、からみついてきそうな悩ましい夏です。

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