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幸福な瞬間

いつものお店でお昼を食べる。顔馴染みの店員さんたちとの他愛もない会話。食事を終え、図書館に寄り、その後軽く買い物もすませ歩いて帰る道の途中、真ん中に大きな池をたたえた公園の横を通り過ぎようとして、何とはなしに、その池のほとりをぐるりと一回りしてみることにした。

初夏の蒸し暑さのなか、木々の緑は日に日にその色の濃さを増してゆく。穏やかにたゆたう水面を噴水のしぶきが細かく揺らしている。そこへ太陽の光が反射して、きらきらと輝いている。

茂る木々のあいだからさす木漏れ日。公園のなかには、のんびりと犬の散歩をする人、ジョギングやウォーキングをする人、そしてよちよち歩きの幼子を、嬉しそうに見守っている家族の団らん姿などがあった。緩やかに過ぎていく休日の午後。多くの人がこの休日を楽しんでいるように見受けられた。耳には、最近気に入ってよく聞いている女性ボーカルの甘くて伸びやかな声と、美しい旋律。合間に子供たちの笑い声も、公園のなかを軽やかに駆け抜けていく。

満ち足りている。

そう感じた。
すべての調和がとれた完璧な瞬間。もう二度と同じ瞬間は訪れない。美しく儚い、いまこの時。ここにいられることの喜びで胸がいっぱいになる。そしてふいに、涙が込みあげた。

今朝久しぶりに夢で見たあの人も、こんなふうに幸せを噛みしめる瞬間にめぐり会えているだろうか。どうかこの些細で、けれど満ち足りた瞬間の幸せが、あの人にもたくさん訪れていますように。いまはもう会うこともないけれど、遠いところから祈っている。そして私は、日常の中でふいに訪れる、この幸福な瞬間を見逃さないよう生きていたい。

私は今を、生きている。

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