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何者かになりたくて、いまだ何者にもなれていない私と、そして貴方へ。

*悲劇のヒロイン

いまここにいられること。楽しさや苦しさを分かち合えるひとたちがいること。その幸せに、そろそろ気づいてもいいはず。

私には、それがまったく分かっていなかったときがある。自分しか大切じゃなかった。独りよがりで、ワガママで、ひとに求めてばかり。苦しくてつらいのは自分だけだと思いこんでいた。自分の半径1メートル以内のことしか見えていなくて、いや、それすらもちゃんと見ようとしていなかった。すべてから目を背け、自ら作り上げた逃げ場所に閉じこもっていた。誰にも愛されないと嘆きながら、悲劇のヒロインを演じていた。

ある日、すべてを変えたくて、意を決して顔をあげた。そこに見えた光景には、ないと思っていたはずの愛があふれていた。誰にも愛されていないなんてことは、まったくなかった。私はものすごく愛されていた。ただ自分自身がそれを認めようとしなかっただけ。だって愛されていることを認めてしまえば、この悲劇のヒロインはもう演じられないのだから。

悲劇のヒロインはもう必要ない。その劇は幕を下ろした。あなたにも、その時がきたのだ。

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