なんといえばよかったの
ごめん、と振りほどいた視線は瞳を捉えることもできなくてただ行き場を失ったまま。
並んで歩く会話が噛み合わない沈黙の間も、何も知らない顔をして本当はあなたが何を言いだすか全部分かっていた。
でも、あなたから発せられる"カノジョ"ということばは、私には身の丈に合わない服を着せられた子供のように感じた。
それは私が纏うべきドレスじゃない。
ごめん、と言った私が涙を流すなんて何て身勝手で傲慢なんだろう。
あなたへの同情なのか、それとも甘美な罪悪感に浸るヒロインを演じているのか。
わたしは、泣いてはならないの。
夜のコンビニで選んだバニラのアイスキャンディが手の甲を甘ったるく汚す。
あぁ、甘さも溢れてしまったら幸せにはなれないんだ。
そんなポエムを考えながら、溢さなかった涙を喉の奥で飲み込んだ。
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