「本当の自分」という呪縛から自由になる -ドラマ「いちばんすきな花」で分人主義が腑に落ちる-
「私」とは、いったいなんなのか?
自分の人生の根底には、常にこの問いがあった気がする。
好き嫌いの感情も、これがしたい・あれがしたいの希望も、こうなりたい・ああなりたいの未来へのビジョンも。
その時々で移ろい、あの人に語るときと、この人と語ったあとでは違うものになってしまったりもする。
いったい私は、本当は何を求めているのか?
何が、「本当の自分」なのか?
いつまでも定まらない「私」は、いつまでたってもしょうがないやつだよなぁと、思ったりもする。
そんなモヤモヤに、新しい考え方を示してくれたのが、平野啓一郎さんの『分人主義』だった。
自分の中に訪れた理解について、書こう書こうと思いながら、分人主義をどう説明すればいいのか、書きあぐねていた。
そんな中、ドラマ『いちばんすきな花』のストーリーが進むにつれ、「コレ、まさに『分人主義』の話!」になってきて、私はひそかに興奮してしまいました。
4人の主人公たちには、自分の人生において重要な存在である「みどりちゃん」がいる。
でも、4人のみどりちゃん像は、まったく違っている。
ゆくえ(多部未華子さん)の「みどりちゃん」は、高校時代に通っていた塾の先生で、「とっても好きな人」というくらい大切な存在。
椿(松下洸平さん)の中学の同級生だった「志木美鳥」さんは、ヤンキーでいつも人をなぐっていた人。
夜々(今田美桜さん)の知る「みどちゃん」は、いつもぽわぽわしている大好きな親戚のおねえちゃん。
紅葉(神尾楓珠さん)にとっては、いつも不機嫌でイライラしていた数学の教師。
だけどどうやら4人の知っているみどりちゃんは、同一人物らしいとわかってくる。
そして、ここからがおもしろい!
今でも連絡先を知っているゆくえは、「ほんとはみんなに知らせるつもりだったけど、先に勝手に会っちゃった」と、ひとりで美鳥と会う。
美鳥「4人まとめて来られたら、感情迷子になりそう」
ゆくえ「わかる。その人の前だけの自分ってあるしね」
まさに!
この感覚、わかるよなぁと、テレビの前で何百人?何千人?が思っただろう。
私もセラピストとして起業して、"愛"や"いのちの輝き"を語る自分に、
会社員時代の上司や同僚が今の私を知ったら、「詐欺だー!」って言うに違いない。「別人じゃん!」って言われるだろうな…
と、身バレするのをひそかに恐れていました(笑)
じゃあ、会社員のころの私は、いつわりの自分だったのか?
そして今の私こそが、「本当の自分」なのか?
今の私が「ありのまま」で、会社員のころの私は「ありのまま」ではなかったのか?
スピリチュアルや自己啓発にかぶれると、ついこんな考えになりがちなんだけど(笑)
そんなふうに過去の自分を否定してしまうのは、過去の自分がちょっとかわいそうだなぁと思う。
あのころはあのころで、必死で自分を生きていたし。
あのころの私も、やっぱり確かに私なんだよね。
「本当の自分」
この言葉は魅惑的だ。
それがわかれば。
それがわかりさえすれば。
きっと素晴らしい人生を生きられるに違ない!
この考えは希望のようでいて、実は
「本当の自分を生きていない、いつわりの自分」
という観念を、私たちの中に植え付けているのかもしれない。
「本当の自分」などいない。
私たちは、たくさんの「分人」を生きている。
そう考えたら、終わりの無い自分探しの旅も終わるかもしれない。
さらに言えば。
やりたいことがわからない
好きなことがわからない
この悩みも消えるのかもしれない。
少なくとも私は、この先、「本当の自分」に悩むことはなくなるだろう。
そう思っています。
らららっと生きよう(^^)/