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ダルバート【2】 タカリー・ダルバートの増殖と拡大

インド食器屋「アジアハンター」の店主・小林真樹さんが、食器買い付けの旅や国内の専門店巡りで出会った美味しい料理、お店、そしてインドの食文化をご紹介します。


前項でも述べたように、ダルバートとは文字通り「ご飯と豆汁」を意味すると同時に単に「食事」をも意味する。ちなみにネパール語にはより狭義の食事を意味する「カナ」という言葉があり、カナとは何の具材で構成されるかと問われればダルとバートではあるのだが、だからといってわざわざ家でお母さんが「今日はダルバートを作ったわよ」ということはない。なぜなら毎日がある種のダルバートだからだ。それがいつの間にかネパール料理を象徴する、分かりやすいワンワードとして主にネパールを訪問する外国人に浸透しはじめ、その動向を機敏に察知したネパール人が自分たちの言葉を再解釈するかたちで改めて外国人向けレストランのメニュー内にアルファベットで記載するようになった。いわばダルバートという呼称は外部からの目線によってネパール人が再発見するようになった料理名ともいえる。よってネパールの食事を「カナ」とカナ表記してもいいのだが、ここでは浸透度で優るダルバートで統一したい。


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2024年12月13日(金)発売
深遠なるインド料理の世界』小林真樹/著